【Mariinsky】ゲルギエフ~ショスタコーヴィチ:交響曲第8番
掲載: 2013年09月11日 17:53
更新: 2013年09月12日 11:54

旧盤から15年以上を経て、
円熟のゲルギエフが再度問いかける、作曲70周年の問題作!
【曲目】
ショスタコーヴィチ:交響曲第8番ハ短調Op.65
【演奏】
ワレリー・ゲルギエフ(指揮)、マリインスキー劇場管
【録音】
2011年6月15、17日、2012年5月16日、2013年3月23日/マリインスキー・コンサート・ホール
SACD Hybrid仕様
約15年振りの再録
ゲルギエフ&マリインスキー管がショスタコーヴィチの交響曲第8番を再録しました。旧録のフィリップス盤は、1994年9月に同じオーケストラとオランダのハーレムにて録音され、発売時「レコード芸術」誌では準特選をとりロングセラーとなっています。
今回は15年以上を経て、ゲルギエフの円熟ぶりと、手兵マリインスキー管を完全に手中に収めた神業の完成度に驚かされます。前盤で見られた未消化さや解釈の甘さは完全に払拭され、黒光りするような凄味を感じます。こうした幻想的で複雑な大曲にこそ、ゲルギエフの真価が最大に発揮しうると申せましょう。
今回の演奏時間は65分38秒。旧盤より2分半ほど長くなっています。
<新録音>
第1楽章 28’04”
第2楽章 6’03”
第3楽章 6’14”
第4楽章 9’57”
第5楽章 15’20”
<旧録音>
第1楽章 25’33”
第2楽章 5’56”
第3楽章 6’13”
第4楽章 10’48”
第5楽章 14’37”
<ムラヴィンスキー(1982)盤>
第1楽章 24’33”
第2楽章 6’07”
第3楽章 6’17”
第4楽章 9’37”
第5楽章 12’58”
注目は第1楽章の遅さ。旧盤より2分半、この作品の決定盤の誉れ高いムラヴィンスキーの1982年盤に比べて3分半も遅く、数ある同曲の録音中でもかなり遅い部類に属します。重苦しさに満ちながら、驚くほど強い緊張感が張り詰め、金縛りにあったように動けなくなる凄さ。ゲルギエフのテンポ設定に納得させられます。急速楽章の第2、第3楽章はほぼ同じ演奏時間ですが、ラルゴの第4楽章は1分ほど早く、希望の兆しが見える第5楽章は逆に遅くなっています。ことにパッサカリアの第4楽章が絶品。こうした精密極まりない音楽でゲルギエフの見せるテクニックは誰にも真似できない凄さ。ショスタコーヴィチの天才性を改めて実感できます。終楽章の不思議な重さにもゲルギエフの哲学が感じられます。
ショスタコーヴィチの交響曲第8番は、独ソ戦さなかの1943年、ソ連軍が攻勢に転じつつある時期に作曲されました。希望の光の見え出した時に作曲されながら、高揚感や喜びの感情は薄く、勝利を願いながらその先にあるであろう不安におびえるマーラー風の屈折感に満ちています。ムラヴィンスキーに献呈され、同年11月3日にムラヴィンスキー指揮ソヴィエト国立交響楽団によりモスクワで初演されました。今年は作曲・初演から70年目にあたり、感慨ひとしおです。年齢も経て、マーラーの全交響曲も経験したゲルギエフ、前盤とは比べものにならぬ成熟と自信に満ちた第8番、ムラヴィンスキー盤に匹敵する名盤の登場と申せましょう。
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