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バッハからシェーンベルクまで、グールド録音の精髄をセレクト~ザ・サウンド・オブ・グレン・グールド

ザ・サウンド・オブ・グレン・グールド

全点新規DSDリマスタリングした「グレン・グールド・リマスタード~ザ・コンプリート・ソニークラシカル・アルバム・コレクション」(81枚組)からのハイライト盤。新旧のゴールドベルク変奏曲を最初と最後に配し、ハイドンからシェーンベルクまで、グールドの録音レパートリーの精髄をセレクトした入門用アルバムです。

【収録曲】
1. バッハ:ゴールドベルク変奏曲BWV988[1955年録音]~アリア
2.バッハ:ゴールドベルク変奏曲BWV988[1955年録音]~第1変奏
3.バッハ:ゴールドベルク変奏曲BWV988[1955年録音]~第2変奏
4.バッハ:ゴールドベルク変奏曲BWV988[1955年録音]~第1変奏
5.ブラームス:間奏曲イ長調作品118の2
6.バッハ:ピアノ協奏曲第5番ヘ短調BWV1056~第2楽章
7.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調作品27の2「月光」~第1楽章
8.バッハ:ピアノ協奏曲第2番ホ長調BWV1053~第2楽章
9.モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番イ長調K.331~第3楽章「トルコ行進曲」
10.ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調作品58~第3楽章
11.ハイドン:ピアノ・ソナタニ長調Hob.XVI:51~第1楽章
12.バッハ:ピアノ協奏曲第3番ニ長調BWV1054~第1楽章
13.シベリウス:ソナチネ嬰ヘ短調作品67の1~第3楽章
14.バッハ:インヴェンション第8番ヘ長調BWV779
15.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番ニ短調作品31の2「テンペスト」~第3楽章
16. バッハ:イタリア協奏曲ヘ長調BWV971~第1楽章
17.シェーンベルク:5つのピアノ曲作品3~第1曲
18.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番ハ短調作品13「悲愴」~第2楽章
19 バッハ:小前奏曲ハ長調BWV933
20.バッハ:ゴールドベルク変奏曲BWV988[1981年録音]~第30変奏
21.バッハ:ゴールドベルク変奏曲BWV988[1981年録音]~アリア・ダ・カーポ

【演奏】
グレン・グールド(ピアノ)
6、8、12.ヴラディミール・ゴルシュマン指揮コロンビア交響楽団
10.レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック

【録音】
1955年~1981年

アナログからデジタルまで――グールドの全仕事を再体験する
宮澤淳一 (青山学院大学総合文化政策学部教授)

グレン・グールドが他界してから、今年の秋で33年になる。
録音や映像に残された彼のピアノ演奏をリアルタイムで聴き込んできた人もいれば、死後にファンになった人も多いだろう。あらゆる録音や映像を買いそろえ、新しい関連書は必ず手を取る人もいれば、いくつかのディスクとの幸せな出会いを経て、それらを集中的に愛聴している人もいるかもしれない。「グレン・グールド・リマスタード」と題された今回の一連のリリースは、あらゆるグールド・ファンにとって、意義深い企画だ。
まず、『ザ・コンプリート・ソニークラシカル・アルバム・コレクション』というグールドの全正規盤を紙ジャケCD81枚にまとめた企画。「全集」をひもとくことは、その作家や芸術家の仕事の全体像を理解することだが、今回の企画はその営みにふさわしい。2007年にも80枚組で同様の紙ジャケ盤全集が発売されたが、今回は全録音をオリジナル・アナログ・マスターから新しくDSDリマスタリングしたそうで、CDというメディアで現在望む限り最良の音質でグールドの録音を楽しめることになる(収録音源の異同はリリース資料をご参照ください)。
また、今回は400ページを超える大判の別冊解説書が付く。校正刷りをデータで拝見したところ、各ジャケット写真が大きく掲載され、各盤裏面の英文解説の再録もある。アーカイヴに眠っていた貴重なアーティスト写真も満載で、初出と思われるものも少なくない。
解説書について、個人的には、全LP盤のレーベル・コピーがそのまま複写掲載されていることを歓迎したい。レーベル・コピーとは、ディスクの「戸籍」にあたるもので、初出時の、カタログ番号、マトリクス番号、曲目、演奏者、録音日、発売日等のすべての基礎データが書かれたカードである。「戸籍」ゆえに原則社外秘だったものが、今回、こうして全公開されるのは夢のようだ。タイプで印字され、変色した1枚1枚のカードに時代の空気が漂っている。
そして今回の全集には、『24/44.1ハイレゾ・ファイルUSB』というUSBメモリーも発売される。ハイレゾとMP3の両方のデータが入手できるので、あらゆるデジタル・デバイスでグールドの全録音が楽しめることになる。ピアノ型の箱も凝っている。
加えて、今回の企画は、アナログ派にも配慮がある。グールドのトレードマークとも言える2つの《ゴールドベルク変奏曲》――1955年のデビュー盤と1981年の再録音盤――がアナログのLP盤として“再発売"されるのだ。
初出時と1つ違う点は音源だ。デビュー盤はオリジナル・アナログ・マスターから新たにトランスファーした音源を用いる。再録音盤の方はもっと凝っていて、技術的には開発途上にあった当時のデジタル録音ではなく、念のため同時にまわしてあったアナログ・テープのマスター素材から“復元"編集をした音源を用いている。両者ともに試聴が楽しみだが、後者アナログ・マスターの場合、LP盤に用いてこそ最良の相性が発揮されるのではないかと期待が高まる(今回のCD全集の再録音盤も、この“アナログ"音源だ)。
もっとも、LP盤で楽しみなのは音質だけではない。LP盤は高級な再生機で一部のオーディオ・マニアが楽しむものだから……と思っている人もいるかもしれないが、簡易な機材でもよいから、LP盤をまわして針を落としてグールドのピアノを聴くと体験をしてみたらどうだろう。グールドも、グールドの同時代人も、そういう所作を繰り返しながら1枚1枚の録音に耳を傾けていたのだ。何か発見があるはずだ。
最後に、名前だけは知っていたり、周囲に熱心な人がいて、気になっているが、(あまり)聴いたことのない人にも今回の企画は配慮がある。『ザ・サウンド・オブ・グレン・グールド』という上記CD全集からのハイライト盤もリリースされる。聴いたことのない曲目の出会いにもなるし、DSD方式の音質を確かめてから「全集」の購入を検討したい人にも参考になるだろう。
(2015年5月)

カテゴリ : ニューリリース

掲載: 2015年05月29日 19:00

更新: 2015年07月29日 19:30