アルゲリッチ~コンプリート・ソニー・クラシカル・レコーディングズ(5枚組)
現代最高のピアニストの一人、マルタ・アルゲリッチ(1941年6月5日生まれ)。その75歳の誕生日を記念して、アルゲリッチがイタリア・リコルディ、RCA、そしてソニー・クラシカルに残してきた全録音を収録したボックスです。各ディスクは、オリジナル・ジャケット・デザインによる紙ジャケットに封入され、厚紙製クラムシェルボックスに収容されます。別冊解説書付き。Disc2~4のリコルディ原盤は、オリジナル・アナログ・マスターテープから24bit/96kHzによってリマスターされたマスターが使用されています。
<CD1>フルートのジェームズ・ゴールウェイとの、息の合った演奏を聴かせる珠玉の1枚。フランクの「フルート・ソナタ」は有名な「ヴァイオリン・ソナタ」をフルートで吹いたものですが、ゴールウェイのつややかな演奏が、ヴァイオリンとはまた異なる新たな魅力をこの曲に与えています。プロコフィエフではアルゲリッチの推進力とゴールウェイの輝かしい歌がぴたりと同期している名演です。ゴールウェイにとっても、ベルリン・フィルを退団しソロ活動に専念し始めた初期の録音にあたり、その闊達な技巧派目をみはるばかりです。なおフランクのソナタはアルゲリッチの得意曲であり、原曲のヴァイオリン版もアッカルド、ギトリス(2種)、リッチ、パールマン、シュヴァルツェンベルクとオフィシャル録音だけでも7種類あり、チェロ版はマイスキーとの複数の録音が知られていますが、フルート版はこのゴールウェイ盤のみです。
<CD2>シューマンは、ショパンと並びアルゲリッチの得意とする作曲家といえるでしょう。中でも「幻想曲」は、1966年のニューヨーク・リサイタル・デビューでもプログラムにも入れていた得意曲でありながら、この1976年のセッション録音以降は取り上げられなくなったという意味で貴重な録音といえるでしょう。「幻想小曲集」はやはり長らくこの76年盤が唯一の録音でしたが、EMIから79年のコンセルトヘボウでのライヴ録音がオフィシャルにリリースされているほか、この中の「夢のもつれ」はアルゲリッチ得意のアンコール曲であるため、よく演奏しています。これらの作品に盛り込まれたシューマン特有の熱狂的ロマンティシズムを、鮮やかな指さばきを駆使し、鋭い求心力で描き出しています。
<CD3>名手イヴリー・ギトリスとコラボレートした初めての録音であり、現在のところ唯一のセッション録音。鬼才と称して間違いないギトリスのヴァイオリンは、何ものにも束縛されない閃きに充ちたアプローチで濃密な演奏を展開しますが、それに対する天才アルゲリッチの自在な応答、柔軟な支え、のびのびとした表現にも目を見張るものがあります。前述の通り、フランクのソナタは、ギトリス本人とのライヴ再録音も含め7種類を数えますが、その中でも求心力の強さの点で特筆すべき盤です。なお[CD2][CD3]は、イタリア以外では当時のCBSによって発売されており、いくつかのレーベルの変遷を経て、再びソニー・クラシカルに戻ってきたことになります。
<CD4>古典派協奏曲の名品2曲を、イギリスの名門ロンドン・シンフォニエッタを弾き振りした演奏。彼女の広いレパートリーの中に占めるベートーヴェンの協奏曲の位置は独特で、まったく演奏しない曲もある一方、この第2番などはこの80年盤のほか3種類のオフィシャル録音が公刊されている得意演目です。ハイドンの機微溢れる柔軟性も特筆もの。師と仰いでいたグルダ譲りの確信に満ちたタッチで弾き出されるピアノは実にエキサイティングかつ変幻自在で見事の一言。
<CD5>アバド&ベルリン・フィルとの共演による2曲をカップリングしたディスクで、いずれもアルゲリッチ唯一の録音。「ブルレスケ」は1992年のジルヴェスター・コンサートのライヴで、シュトラウス若書きのヴィルトゥーゾ向けのコンチェルタンテ作品の魅力を余すことなく解放させ、壮絶な名演を成し遂げています。その半年前のライヴであるスクリャービン「プロメテウス」も、精緻かつ圧倒的な迫力に満ちた力演です。
(ソニー・ミュージック)
【サイズ(予定)】
131mm(横)×132mm(縦)×21mm(高さ)
【収録内容】
<Disc1>
1.プロコフィエフ:フルート・ソナタ ニ長調 Op.94
2.フランク:フルート・ソナタ イ長調(原曲:ヴァイオリン・ソナタ)
ジェイムズ・ゴールウェイ(フルート)
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
[録音:1975年5月 ロンドン、キングズウェイ・ホール(ステレオ:セッション)]
原盤:RCA
<Disc2>
シューマン:
幻想曲 ハ長調 Op.17
幻想小曲集 Op.12
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
[録音:1976年(ステレオ:セッション)]
原盤:Ricordi
<Disc3>
1.フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
2.ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
イヴリー・ギトリス(ヴァイオリン)
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
[録音:1977年(ステレオ:セッション)]
原盤:Ricordi
<Disc4>
1.ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.19
2.ハイドン:ピアノ協奏曲 ニ長調 Hob.XVIII-11
マルタ・アルゲリッチ(指揮、ピアノ)
ロンドン・シンフォニエッタ
[録音:1980年(ステレオ:セッション)]
原盤:Ricordi
<Disc5>
1.R.シュトラウス:ピアノと管弦楽のための「ブルレスケ」ニ短調 AV.85
[録音:1992年12月 ベルリン、フィルハーモニー(デジタル:ライヴ)]
2.スクリャービン:プロメテウス~火の詩(交響曲第5番)
[録音:1992年5月 ベルリン、フィルハーモニー(デジタル:ライヴ)]
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
クラウディオ・アバド(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
原盤:Sony Classical
カテゴリ : ニューリリース | タグ : ボックスセット(クラシック)
掲載: 2016年03月28日 18:30