児玉麻里&桃姉妹~ピアノ連弾版“チャイコフスキー三大バレエ組曲”
キングインターナショナル企画によるペンタトーン・レーベル制作第1号。
SACDハイブリッド盤。児玉麻里& 桃姉妹共演のCD はいかにもありそうながら、実は初めて。その記念すべきアルバムが超魅力的ラインナップで登場です。
チャイコフスキーの作品のなかでもとりわけ人気の高い三大バレエ。これを意外な大物作曲家たちがピアノ・デュオ編曲を残していました。それらを児玉姉妹の演奏で聴くことができるのは最高の贅沢と申せましょう。
ラフマニノフ編曲の「眠りの森の美女」と、ドビュッシー編曲による「白鳥の湖」は比的知られていて録音もありますが、児玉姉妹の演奏は段違いの素晴らしさ。オリジナルのオーケストラと全く遜色ないばかりか、ラフマニノフとドビュッシーのピアニズムの違いをはっきり味わえて充実の極み。どちらもラフマニノフとドビュッシーの最初の仕事だったというのが興味津々です。
超お宝がアレンスキー編曲による「くるみ割り人形」。アレンスキーは近年日本でも熱心なファンを増やしている作曲家ですが、この編曲は楽譜が極めて入手困難なため伝説となっていました。それがついに音になりました。アレンスキーはリムスキー=コルサコフの弟子ながらチャイコフスキーを崇拝し強い影響を受けていたうえ、本質的にピアノ作曲家だったので、これ以上の適役は考えられません。アレンスキーは「くるみ割り人形」全曲を4手連弾用に編曲していますが、ここでは人気の組曲ナンバーとパ・ド・ドゥ(グラン・アダージョ)を披露。ピアノ・デュオ書法を知り尽くしたアレンスキーならではの効
果にゾクゾクさせられます。ことに「花のワルツ」の華やかさ、「パ・ド・ドゥ」終結部のピアノがうなりをあげる音の渦はピアノ・デュオならでは。
児玉姉妹の演奏はオシャレでゴージャス。これまで聴いたこともないようなピアノ・デュオの高みに達しています。クリスマス・シーズンに雰囲気もピッタリでプレゼントにも最適です。
(キングインターナショナル)
ピアノ好きなら良くご存じのとおり、四手のためのピアノ作品は、一台のピアノを2人で弾く連弾曲と、二台のピアノをそれぞれ2人のピアニストが弾く二台ピアノのための楽曲に大別されます。その目的もまたはっきりしていて、前者は家庭音楽会むけ、後者はコンサート用の作品と申せましょうか。
連弾曲が、ヨーロッパに中産階級が勃興してきた19世紀から、ピアノのレッスンを受けた中流家庭の子弟たちが、家にあるピアノを一緒に弾いて楽しむために発展したのに対して、二台ピアノのための作品はいわばオーケストラの代役。日常的に本物のオーケストラに接することができなかった地方都市などで、二台のピアノをステージに上げて、四手用にアレンジされた管弦楽曲を楽しんだのです。ブラームスの交響曲や“新世界より”、“悲愴”といったロマン派の人気楽曲が盛んに演奏されました。また、19世紀も終わりになると、サロン文化、都市文化が隆盛をみせたパリで二台ピアノの演奏が盛んになり、フォーレやドビュッシー、プーランクなどが多くの作品を生み出すようになります。その分だけ、二台ピアノのための作品は、同等の演奏技術をもったプロのピアニスト2人が妙技を競い合う難度の高い音楽になってゆきます。ソリストとしては例外と言っていいほど、マルタ・アルゲリッチが二台ピアノのためのレコーディングを行なってきたのは、このスリリングな同業者との競演を彼女が心から楽しんでいるためでしょう。
シューベルトが「連弾曲の王様」の異名をとっているように、連弾曲ではインティメートな雰囲気、家庭的な暖かさこそが肝要となります。その点、兄弟姉妹や夫婦ほど連弾曲に相応しいピアノ・デュオはありません。海外で姉妹デュオと言えば、ラベック姉妹とペキネル姉妹が人気を二分しておりますが、日本では一時、仲道郁代&祐子姉妹も盛んに活動を行なっていました。ともに強靭なテクニックと高い音楽性をもった児玉麻里と桃姉妹が共演するのは、この録音が初めてとのこと。理想的なデュオがどんな素敵なチャイコフスキーを聴かせてくれるのか、リリースが待ち遠しい一枚です。
(タワーレコード)
【収録曲目】
チャイコフスキ/ラフマニノフ編曲(連弾版)
「眠りの森の美女」組曲 Op.66
(序奏/リラの精~アダージョ/パ・ダクシオン~長靴をはいた猫~パノラマ~ワルツ)
チャイコフスキー/アレンスキー編曲(連弾版)
バレエ音楽「くるみ割り人形」 Op.71 より
(小序曲/行進曲/金平糖の踊り/アラビアの踊り/中国の踊り/トレパーク/葦笛の踊り/花のワルツ/パ・ド・ドゥ[グラン・アダージョ])
チャイコフスキー/ランゲリ編曲(連弾版)
「白鳥の湖」Op.20より
(情景/四羽の白鳥の踊り/パ・ド・ドゥ[グラン・アダージョ])
チャイコフスキー/ドビュッシー編曲(連弾版)
「白鳥の湖」Op.20より
(ロシアの踊り/スペインの踊り/ナポリの踊り)
【演奏】
児玉麻里&児玉桃(ピアノ・デュオ)
【録音】
2016年4月、MCOスタジオ5、ヒルフェルムス、オランダ
カテゴリ : ニューリリース | タグ : SACDハイブリッド(クラシック) 高音質(クラシック)
掲載: 2016年10月01日 00:00