初CD化!フランス・チェロ界最後の巨人、アンドレ・ナヴァラの1980年東京ライヴ!
初CD化となる貴重音源!フルニエ、ジャンドロン、トルトゥリエらと並び20世紀フランスを代表するチェリストの一人であるアンドレ・ナヴァラ(1911-1988)の、1980年来日ライヴ録音です。ロマンティックで詞的な表現力を持ちながらも、スケール大きなボウイングで豊かな音楽をたっぷりと聴かせるその演奏はまさに巨匠芸の極み。シュタルケル、トルトゥリエ、ギトリスといった世界の名手と共演している岩崎淑のピアノも格調高く、素晴らしいアンサンブルがお聴き頂けます。『アルペジョーネ』やブラームスのソナタなどのロマン派の大曲を中心とした、チェロの醍醐味満載のプログラムをお楽しみください。また解説書も読みごたえあり。碩学のチェリスト、懸田貴嗣(かけた・たかし)氏による「アンドレ・ナヴァラの生涯」「アンドレ・ナヴァラ ディスコグラフィー」「楽曲について(曲目解説)」を収録しています。
(キングインターナショナル)
アンドレ・ナヴァラ・ライヴ・イン・東京
[CD1]
ボッケリーニ:チェロ・ソナタ ト長調 G.5
シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ イ短調 D.821
シューマン:アダージョとアレグロ Op.70
ブラームス:チェロ・ソナタ第2番 ヘ長調 Op.99
[CD2] アンコール
ドヴォルザーク:チェロとピアノのためのロンド Op.94
ポッパー:マズルカ Op.11-3
ラヴェル:ガブリエル・フォーレの名による子守歌
【演奏】
アンドレ・ナヴァラ(チェロ)
岩崎 淑(ピアノ)
【録音】
1980年3月21日/日本都市センターホール
アンドレ・ナヴァラ~生涯と芸術
アンドレ・ナヴァラは1911年10月13日に南フランスのビアリッツの音楽的な家庭に生まれました。9歳でトゥールーズ音楽院に学び、4年後に一等賞で卒業。その後、パリ音楽院に入学。ジュール・ロエブにチェロを、シャルル・トゥルヌミールに室内楽を学び、1927年15歳で一等賞を取り、卒業しました。
1929~35年までクレトリー四重奏団のチェロ奏者として活動、次いでヨゼフ・ベンヴェヌーティ(ピアノ)とルネ・ベネデッティ(ヴァイオリン)とともにBBN三重奏団を組織するなど、キャリアの初期は室内楽奏者として活躍。1931年にはコロンヌ管弦楽団と共演し、ラロのチェロ協奏曲を弾き、ソリストとしてもデビューしました。1937年にはウィーン国際チェロ・コンクールに優勝し、数々の演奏契約が結ばれましたが、第2次大戦のため活動を停止せざるを得ませんでした。戦後は、フランスを代表するチェロの名手として、世界各地に演奏旅行を行いました。我が国にも1962年4月に初来日後、1980年、1982年、1984年と4度訪れています。
彼は同時代の音楽を積極的に取り上げたため、多くの作曲家が彼に作品を捧げていて、デュポン、パスカル、ジョリヴェ(第1番)、トマジらの協奏曲の世界初演を行っています。教師としても名高く、1949年にパリ音楽院の教授となり、1954年からイタリア・シエナのキジ音楽院の夏季クラスで教え、1958年には旧西ドイツのデトモルト音楽院チェロ科の教授に就任するなど、ヨーロッパ各地で後進の指導に当たっていました。
1956年にはフランス政府よりレジオン・ドヌール・シュヴァリエ賞を受賞。その後も「芸術と文学のシュヴァリエ」の称号を受けるなど、彼の後半生は栄誉と名声に包まれました。1988年7月31日、心臓発作のため、滞在中のシエナのホテルで76年の生涯を閉じています。
流麗なテクニックと端正な音楽作り、そして豊かな情感が結び付いた詩趣に満ちた芸術…ナヴァラの演奏の特質はこのように集約できると思います。技巧面では、ヴァイオリンの名教師カール・フレッシュの技法などを研究して、独自の演奏技法を産み出しました。そのため、どのような技巧的な難所においても、ナヴァラの音はヴォリュームと緊張感を失わなかったと言われています。また、スタッカートやスピッカートなどの運弓の素晴らしさは、当時のチェリストたちの憧れの的でした。
演奏解釈面では新古典主義的な演奏様式に与し、名技性を排した、楽曲のスタイルに忠実な演奏を心掛けました。しかし、彼の造り出す端正な音楽は、些かも形式主義に陥ること無く、常に輝かしい生命力と気品高い芸術性を湛えていました。
今回発売される1980年、東京でのライヴ録音は、彼が同時期にカリオペ・レーベルに録音したボッケリーニとシューベルトで始まり、後半は壮年期の録音があるブラームスのソナタ第2番を中心に据え、最後にはお得意のアンコール・ピースが並ぶという実に魅力的なプログラムとなっています。ナヴァラの芸術を知る上で、そして彼と日本の聴衆の結びつきを知る上で、かけがえのないCDの登場と言えるでしょう。
(タワーレコード商品本部 板倉重雄)
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2017年01月17日 17:30