ハンガリー出身の名ヴァイオリニスト、ヨハンナ・マルツィの名演集が超廉価BOXに!
ヴァイオリンの名伯楽イェネー・フーバイに師事した女性奏者ヨハンナ・マルツィ(1924~1979)は、元々録音が少なく、死後再評価されたため、音源を聴こうにもLPが手に入らず、一時期は「幻のヴァイオリニスト」的な存在でした。長く廃盤となっていたLPの再発売は日本で始まり、CD化も日本で先行して行われましたが、海外でも放送音源の復刻が盛んとなり、この20年でディスク状況は大きく改善しました。そして、遂にはこのような10枚組で2,000円を切るような超廉価BOXにまとめられるのは、筆者のように1980年代を体験している者にとっては隔世の感があります!
マルツィの良さは、フーバイ門下らしい確実で滑らかな技巧を保持していること、音色が多様で豊かであること、そしてこのような技巧と音色が、楽曲を真正面から捉えた正統的な解釈と結びついて、音楽を瑞々しくスケール大きく描き出すことと言えるでしょう。例えばDisc8に収録されたシューベルトの「幻想曲」。難曲を難曲と感じさせない技巧のゆとり、楽曲を雄大に描き出す造形力、人間精神の奥底を見通すような深み、フィナーレでの飛翔するような志の高さなど、他のどのCDと比べてもひけをとらない素晴らしい演奏を示しています。バッハの「無伴奏」もモダン楽器&モダン奏法による代表的な演奏の一つ。ブラームスやドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲で示した内面的でいて華もある演奏は彼女のソリストとしての器量の大きさを示しています。
一方でCDの余白に収められたヴァイオリン小品の演奏で示された粋な表情、民族色や技巧性の横溢も、サロン演奏などの実地で鍛え上げられた、一昔前のヨーロッパの演奏家の深い味わいを宿しています。
1枚1枚じっくりと耳を傾けることで、この女性奏者の多様で偉大な芸術性が胸に迫ってくることでしょう。
(タワーレコード)
『ヨハンナ・マルツィ(Vln):名演奏集』
【曲目】
[Disc. 1]
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第8番Op.30-3
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタK.376
ジャン・アントニエッティ(pf)
1952年録音(DG原盤)
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番K.216
ハンス・ミュラー=クライ指揮、シュトゥットガルト放送交響楽団
1962年録音(放送音源)
[Disc. 2]
ドヴァルザーク:ヴァイオリン協奏曲Op.53
フェレンツ・フリッチャイ指揮、ベルリン・ドイツ交響楽団
1953年録音(DG原盤)
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲Op.64
ハンス・ミュラー=クライ指揮、シュトゥットガルト放送交響楽団
1959年録音(放送音源)
[Disc. 3]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲Op.77
パウル・クレツキ指揮、フィルハーモニア管弦楽団
1954年録音(旧EMI原盤)
シマノフスキ:夜想曲とタランテラOp.28
ジャン・アントニエッティ(pf)
1951年録音(DG原盤)
[Disc. 4]~[Disc. 6]
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタとパルティータ全曲
1955年録音(旧EMI原盤)
[Disc. 7]
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲Op.64
ベートーヴェン:ロマンス第1番、第2番
パウル・クレツキ指揮、フィルハーモニー管弦楽団
1955年録音(旧EMI原盤)
ラヴェル:フォーレの名による子守歌、ハバネラ形式の小品
ジャン・アントニエッティ(pf)
1951年録音(DG原盤)
[Disc. 8]
シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのロンドD.895
シューベルト:ヴァイオリンとピアノのための幻想曲D.934
1951年録音(旧EMI原盤)
ファリャ:スペイン舞曲「はかなき人生」
ミヨー:ブラジルの郷愁「イパネマ」
ジャン・アントニエッティ(pf)
1955年録音(DG原盤)
[Disc. 9]
シューベルト:ヴァイオリンソナタ第3番D.408、イ長調D.574
ジャン・アントニエッティ(pf)
1955年録音(旧EMI原盤)
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番K.218
オイゲン・ヨッフム指揮、バイエルン放送室内管弦楽団
1955年録音(DG原盤)
[Disc. 10]
シューベルト:ヴァイオリンソナタ第1番D.384、第2番D.385
ジャン・アントニエッティ(pf)
1955年録音(旧EMI原盤)
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番K.218
ハンス・ミュラー=クライ指揮、シュトゥットガルト放送交響楽団
1956年録音(放送音源)
カテゴリ : ニューリリース | タグ : ボックスセット(クラシック)
掲載: 2017年06月02日 00:00