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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.5

チェット・ベイカー『チェット・ベイカー・シングス』(1956)

CHET

チェット・ベイカー(tp, vo)
ラス・フリーマン(p)
ジェームズ・ボンド(b) on 1-6, カーソン・スミス(b)on7-14
ピーター・リットマン(ds) on 1,2,5, ローレンス・マラブル(ds) on 3,4,6,
ボブ・ニール(ds)on7-14

1956年7月23日、30日(トラック1-6)、1954年2月15日(トラック7-14)録音

曲目:
1.ザット・オールド・フィーリング
2.イッツ・オールウェイズ・ユー
3.ライク・サムワン・イン・ラヴ
4.マイ・アイディアル
5.アイヴ・ネヴァー・ビーン・イン・ラヴ・ビフォア
6.マイ・バディ
7.バット・ノット・フォー・ミー
8.タイム・アフター・タイム
9.アイ・ゲット・アロング・ウィズアウト・ユー・ヴェリー・ウェル
10.マイ・ファニー・ヴァレンタイン
11.ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・アナザー・ユー
12.ザ・スリル・イズ・ゴーン
13.アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥ・イージリー
14.ルック・フォー・ザ・シルヴァー・ライニング

【アルバム紹介】
1.クールでスタイリッシュなチェット・ベイカーのヴォーカルの魅力にあふれた傑作
2.名スタンダード“マイ・ファニー・ヴァレンタイン”の名演
3.ウェストコースト・ジャズ特有のライト感覚

第4回でご紹介したジョン・コルトレーンの傑作『バラード』に負けず劣らずのロマンティックな要素を持った一枚をさらに挙げるとするならこのチェット・ベイカーの『シングス』は外せません。

チェット・ベイカーはアメリカ西海岸で1950年代に名を馳せた名トランぺッターですが、本作でそのクールかつスタイリッシュなヴォーカルを披露したことで、ヴォーカリストとしての名声も確立し、他のジャズ・ミュージシャンとは別のステイタスを築き上げたことでも知られています。中性的な声質とどこか翳りのある歌い方はジャンルを超えてリスペクトされており、1988年にその波乱に満ちた生涯を終えた後、没後30年を経過した今もなお根強い人気をもつアーティストでもあります。

本作はロマンティックなメロディを持ったスタンダード曲中心の選曲であり、名曲“マイ・ファニー・ヴァレンタイン”は極め付けの名演として知られています。このアルバムがCD化されてまもなかった90年代には、毎年ヴァレンタインのシーズンになると、プレゼント用にこのCDを購入する方が多かったものです。

また本作でチェットのクールなヴォーカル、トランペットを引き立てている重要な要因としてウェストコースト・ジャズのライト感覚あふれるサウンドを見過ごせません。ジャズというと、ニューヨークのような都会の片隅で、タバコの煙が漂う淀んだ空気の中で、ウィスキーを片手に聴くようなイメージも大いにありますが、ウェストコースト・ジャズはアメリカ西海岸特有の低湿度のカラッとした気候の中で、ビールを飲みながら聴くのがお似合いのサウンドです。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
“マイ・ファニー・ヴァレンタイン”が名演ですが、“バット・ノット・フォー・ミー”も絶品。

“マイ・ファニー・ヴァレンタイン”は『サウンド・オブ・ミュージック』で有名な作曲家リチャード・ロジャースと作詞家のロレンツ・ハートのコンビによるミュージカル・ソング。また、“バット・ノット・フォー・ミー”はジョージ・ガーシュインが作曲、兄のアイラ・ガーシュインが作詞した、こちらもミュージカル・ソングです。
前者はチェットのヴォーカルが憂いを含んだ曲調にマッチし、独特の雰囲気を醸しだしており、後者はイントロで爽やかなトランペット、そしてスマートに歌に移り、軽やかに歌いこなしつつ、ソロはクールにきめて、という展開が見事です。
またこの2曲は90年代前後以降、映画に使われて、その時の旬のサウンドでアレンジされた名カヴァーがあります。“マイ・ファニー”は1989年の映画『恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』で使われた主演のミシェル・ファイファーの歌唱によるバージョン。このサントラは現在廃盤ですが、当時このトラックを店でかけていると、「歌っているのは誰ですか?このCD下さい」と必ず問い合わせを受けました。“バット・ノット~”の方は1994年のイギリスのロマンティック・コメディ映画『フォー・ウェディング』。この曲を歌っているがエルトン・ジョン。映画のロマンティック・ムードを盛り上げていましたね。
名スタンダードはその時代にあった使われ方で次世代に浸透していっているのがわかります。
その映画の話題でもうひとつ。チェット自身の自伝的映画が2016年に日本でも公開されました。人気俳優のイーサン・ホーク主演『ブルーに生まれついて』です。この映画をご覧になるとチェットの生きざまをより深く知ることができます。

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タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2018年12月07日 12:00