WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.91
アン・バートン『ブルー・バートン』(1967)
アン・バートン(vo)
ルイス・ヴァン・ダイク(p)
ジャクエス・スコルス(b)
ジョン・エンゲルス(ds)
ピエ・ノールディック(as) ※3、6、8曲に参加
1967年録音
曲目:
01.捧ぐるは愛のみ
02.ゴー・アウェイ・リトル・ボーイ
03.ヒー・ワズ・トゥ・グッド・トゥ・ミー
04.バット・ノット・フォー・ミー
05.思い出はやすし
06.心変わりしたあなた
07.グッド・ライフ
08.夜は更けて
09.サニー
【アルバム紹介】
1.オランダの歌姫アン・バートンの公式デビュー・アルバム
2.落ち着いた深みのある歌声で歌唱したスタンダード・バラード・ソング集
3.バックには同郷のルイス・ヴァン・ダイクのピアノ・トリオがサポート
前回ご紹介いたしましたブロッサム・ディアリーはピアノの弾き語りでシンプルなコンボ編成で聴かせるインティメイトな雰囲気が魅力のアルバムでした。同様のアトモスフェリックなムードに溢れたヨーロピアン・ジャズ・ヴォーカルの名盤を取り上げます。
それがオランダの歌姫、アン・バートンの傑作『ブルー・バートン』です。
ロマンティックなスタンダード・バラード曲を、落ち着いた深みのある歌声で歌唱した、彼女にとって公式のデビュー・アルバムとなった1作です。本国オランダのレーベルArtoneからリリースされました。
歌のレッスンを受けたことはなく、もっぱらドリス・デイ、ジョー・スタッフォード、ローズマリー・クルーニー、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーンを聴きこみ、やがてビリー・ホリディやシャーリー・ホーンの影響もあり、独自のスタイルを確立してゆきました。
楽曲はスタンダード中心の中に、ジェリー・ゴフィン&キャロル・キングの“ゴー・アウェイ・リトル・ボーイ”(オリジナル・タイトルは“ゴー・アウェイ・リトル・ガール”)やボビー・へブの“サニー”といったポップ系のナンバーなども聴かせています。
バックには同郷のピアニスト、ルイス・ヴァン・ダイクのピアノ・トリオがバートンのヴォーカルに好サポートで寄り添い、バラード・ナンバーの数々をしっとり美しく彩っています。3曲にはアルト・サックスが加わります。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
短くも美しい“グッド・ライフ”。
この曲はフランス人シンガーのサッシャ・ディステルが作曲したナンバーで、一般的にはトニー・ベネットが1963年にリリースして大ヒットしたナンバーとして知られています。
美しいヨーロピアン・テイストのメロディを、アン・バートンは情感をたたえながら、歌い上げています。
リリカルなピアノのイントロに導かれ、心の奥から静かに響きだすような歌声で歌い始め、時折入るピアノのオブリガートと優雅に絡み合いながら、最後は「バイバイ」とささやくように終わってゆきます。2分半ほどの短い演奏ですが、楽曲とアン・バートンのヴォーカルの美が凝縮した1曲となっています。
静かな時間の中で、そっと聴き始めたくなる、女性ジャズ・ヴォーカルの逸品です。
国内盤Blu-spec CD2(一般普及盤)
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2020年08月21日 10:00