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Fred Hersch(フレッド・ハーシュ)|感動のピアノ・ソロ・アルバム『Songs From Home』

Fred Hersch

ピアノの詩人、フレッド・ハーシュが、本年(2020年)8 月に録音した感動的なピアノ・ソロ・アルバム!!

原点は、コロナ・ウィルスのパンデミックの初期段階。多くの音楽家がそうであったように、フレッド・ハーシュ自身も、人前で音楽を演奏することが突然不可能になった現実に、無力感を感じ、アイデンティティの喪失感を覚えたといいます。しかし、そんな気持ちを抱えながら、「誰かの心を明るく照らす希望」をこめ、ソロ・ピアノの演奏に託し、Facebookで毎日、投稿をし続けたハーシュは、ある日、愛にみちたコメントを読み、とても救われ、励まされたのだそうです。そして、その後はFacebook での投稿からは離れていきながらも、セカンド・ハウスという場でアルバムの録音ができるのでは、という思いをいだき始めたとのことです。

タイトルも示すように、録音は、自宅(HOME) でのもの。しかし、これは、日常の延長ではなく、日常から離れて音楽と向き合った演奏の記録。NYの地を離れ、パートナーと共有するペンシルベニアの森にある第2の家での一週間、その間にフレッド・ハーシュは、パートナーにはNYにとどまってもらえるように頼み、スタインウェイと向き合って録音したとのことです。そして、なされた演奏は、筆舌に尽くしがたい響きとなってここに届けられました。

完璧ではないと語られるものの、高い天井と、素晴らしい音響空間におかれたスタインウェイで紡ぎだされた音楽は、静謐でありながらも、深い癒しのようなものももたらす奥義極まるもの。取り上げた曲には、歌詞のあるカバー曲の数々も。しかしそれは作為的なものではなく、フレッド・ハーシュが「自らがジャズとは何かを知る前にさかのぼった」と語るもの。そして、実は、こうした楽曲を取り上げる作品を創ることは、前々から念頭にあったもので、数年前に来日した時、「いつか、自分が影響を受けたPOPS 曲を演奏する作品を創りたい」と語っていたものでした。つまり、これは自己の歴史との対話でもあり、長く温めていたものを実現したものともなります。

映画『マイ・フェア・レディ』の曲「Wouldn't it be Lovely」にきく、愛らしくもロマンティックで、深い響きをたたえたオープニングから、なんとも、心や体に優しくダイレクトに届く素晴らしい世界が…。ハーシュはこの演奏に「よりよい日々/世界への願いを込めて表現した」といいます。演奏曲の中では、母親に捧げたパーソナルな「West Virginia Rose」の再演と、トラディショナル・ソング「The Water is Wide」をメドレーのようにしてつなげるほか、キャリア初期から弾き続ける「Sarabande」などオリジナル曲も織り込む一方、尊敬するジョニ・ミッチェルの「All I Want」、また、グレン・キャンベルが歌った「Witchita Lineman」では「愛( と孤独)」を語る詩と対話するような切ない表現をみせ、感動的です。一方、20 世紀初頭に生まれたバラード曲や、エリントンはジャズの伝統と語るような端正な演奏…そして、ラストは、敬愛してやまないジョン・レノンとポール・マッカートニーの「When I’m Sixty-Four」ですが、実は、フレッド・ハーシュは、今64 歳。ストライド・ピアノの軽妙なアレンジウィットにも富んだ演奏で締めくくるところも、知性を感じさせるところです。

輸入盤:国内流通仕様CD

日本語帯・解説書付 (フレッド・ハーシュ自身によるライナー翻訳を掲載)

輸入盤CD

収録曲:
01 Wouldn’t It Be Loverly (Loewe)
02 Wichita Lineman (Webb)
03 After You’ve Gone (Layton)
04 All I Want (Mitchell)
05 Get Out Of Town (Porter)
06 West Virginia Rose (Hersch) / The Water Is Wide (traditional)
07 Sarabande (Hersch)
08 Consolation (A Folk Song) (Wheeler)
09 Solitude (Ellington)
10 When I’m Sixty-Four (Lennon/McCartney)

掲載: 2020年10月09日 13:36