『パスキエ・トリオの芸術』SP時代~ステレオLPまで活躍した弦楽三重奏の名団体(16枚組)
20世紀初頭の室内楽は、ヴァイオリニスト、教育者で弦楽四重奏団の主宰者でもあったリュシアン・カペー(1873-1928)の影響で、非常に豊かな時代を経験しましたが、弦楽四重奏曲の優位性が多様性を覆い隠すことはありませんでした。1910年にはヴァイオリニストのマルセル・シャイエ(1881-1936)がピアノ五重奏団を結成し、1922年にはハープ奏者のピエール・ジャメ(1893-1991)がパリ器楽五重奏団を結成しています。そして1927年に結成されたパスキエ・トリオは、このような多様な編成による室内楽運動の一翼を担い、クラシック音楽界に大きな影響を与えました。
フランスのヴィオラ奏者、ピエール・パスキエ(1902-1986)はトゥールに生まれ、モーリス・ヴューに師事。1927年にパリ音楽院を卒業してすぐに、弟でヴァイオリニストのジャン(1903-1992)、チェロ奏者のエティエンヌ(1905-1997)とともにパスキエ・トリオを結成しました。1974年まで、約半世紀の長きにわたって演奏会に、レコードに活躍しました。
1934年にはフランス・パテ社にベートーヴェンの弦楽三重奏曲ハ短調Op.9-3を録音しレコード・デビュー。翌1935年にはSP時代の名盤として知られるモーツァルトのディヴェルティメントK.563を録音し、彼らの名が世界に轟くとともに、この作品は彼らの看板楽曲となり、レコードがモノラルLP、ステレオLPと発達する毎に再録音が行われました。
また、彼らの見事なアンサンブルは同時代の作曲家たちの創作欲を刺激し、1936年にはモーランから弦楽三重奏曲ト長調、1937年にはルーセルから弦楽三重奏曲Op.58、1938年にはサマズイユから三重奏のための組曲、1946年にはフローラン・シュミットから弦楽三重奏曲Op.105を献呈されています。
今回のBOXはパスキエ・トリオの録音の初集成で、1950年代のモノラル録音を中心に彼らの幅広いレパートリーが収められています。前記したモーツァルトのディヴェルティメントも1935年(CD16)、1951年(CD1)、1960年(CD14)の3つの録音を聴くことができます。また、1956年録音のメシアンの「世の終わりのための四重奏曲」は1941年1月15日のドイツ軍捕虜収容所の初演メンバーであったメシアン自身とチェロのエティエンヌ・パスキエが加わった録音として歴史的意義があるものです(CD15)。また、彼らに献呈されたフローラン・シュミットの弦楽三重奏曲Op.105が世界初録音で収録されているのも貴重です(CD16)。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)
【参考画像】パスキエ・トリオの宣材写真(パテ社)
【曲目】
[CD 01]
モーツァルト
ディヴェルティメント変ホ長調 KV 563
録音:1951年
6つの前奏曲とフーガ K404aから
前奏曲 第1番&フーガ 第1番 (after BWV 853)
前奏曲 第2番&フーガ 第2番 (after BWV 883)
前奏曲 第3番&フーガ 第3番 (after BWV 882)
前奏曲 第6番&フーガ 第6番 (after W.F. Bach's Fugue No. 8)
録音:1951年
[CD 02]
ルーセル
セレナーデ Op. 30
ジャン・ピエール・ランパル (フルート), リリー・ラスキーヌ (ハープ), パスキエ・トリオ
録音:1955年2月
フルート三重奏曲 ヘ長調 Op. 40
ジャン・ピエール・ランパル (フルート), エティエンヌ・パスキエ (チェロ)
録音:1950年代
弦楽三重奏曲 イ短調 Op. 58
録音:1950年代
[CD 03]
ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調 Op. 70-1
リュセット・デカーヴ (ピアノ), ジャン・パスキエ (ヴァイオリン), エティエンヌ・パスキエ (チェロ)
録音:1950年代
モーツァルト:アダージョとロンド ハ長調 KV 617
リリー・クラウス (celesta), ジャン・ピエール・ランパル (フルート), ピエール・ピエルロ (オーボエ)
ピエール・パスキエ (ヴィオラ), エティエンヌ・パスキエ (チェロ)
録音:1955年
ドビュッシー:フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ L. 137
ジャン・ピエール・ランパル (フルート), ピエール・ピエルロ (オーボエ),オデット・ル・ダンチュ (ハープ)
録音:1955年1月
[CD 04]
フォーレ
ピアノ四重奏曲 第1番 ハ短調 Op. 15
マルグリット・ロン(ピアノ)
録音:1956年2月13日
ピアノ四重奏曲 第2番 ト短調 Op. 45
ジャン・ドワイアン (ピアノ)
録音:1957年
[CD 05]
フォーレ:ピアノ三重奏曲 ニ短調 Op. 120
ジャン・ドワイアン (ピアノ), ジャン・パスキエ (ヴァイオリン), エティエンヌ・パスキエ (チェロ)
録音:1957年
ハイドン:弦楽三重奏曲 Op.32
録音:1951年
モーツァルト:ピアノ三重奏曲 第4番 ホ長調 KV 542
ロベール・ヴェイロン=ラクロワ (ピアノ), ジャン・パスキエ (ヴァイオリン), エティエンヌ・パスキエ (チェロ)
録音:1950年代
[CD 06]
モーツァルト
ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 KV 478
ロベール・ヴェイロン=ラクロワ (ピアノ), パスキエ・トリオ
録音:1950年代
ピアノ四重奏曲 第2番 変ホ長調 KV 493
ロベール・ヴェイロン=ラクロワ (ピアノ), パスキエ・トリオ
録音:1950年代
ピアノ三重奏曲 ニ短調 K. 442~第2楽章
ロベール・ヴェイロン=ラクロワ (ピアノ), ジャン・パスキエ (ヴァイオリン), エティエンヌ・パスキエ (チェロ)
録音:1950年代
[CD 07]
モーツァルト
フルート四重奏曲 第1番 ニ長調 KV 285
フルート四重奏曲 第2番 ト長調 KV 285a
フルート四重奏曲 第3番 ハ長調 KV 285b
フルート四重奏曲 第4番 イ長調 KV 298
ジャン・ピエール・ランパル (フルート), パスキエ・トリオ
オーボエ四重奏曲 ヘ長調 K. 370
ピエール・ピエルロ (オーボエ), パスキエ・トリオ
録音:1950年代
[CD 08]
ベートーヴェン
弦楽三重奏曲 第1番 変ホ長調 Op. 3
弦楽三重奏のためのセレナーデ ニ長調 Op. 8
録音:1950年代
[CD 09]
ベートーヴェン
弦楽三重奏曲 ト長調 Op. 9-1
弦楽三重奏曲 ニ長調 Op. 9-2
弦楽三重奏曲 ハ短調 Op. 9-3
録音:1950年代
[CD 10]
ジャン・リヴィエ:弦楽三重奏曲
シェーンベルク:弦楽三重奏曲 op.45
録音:1957年10月30日
シュミット:偶然 Op.96 - ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための室内協奏曲
モニク・メルシエ (ピアノ)
録音:1959年5月30日
[CD 11]
モーツァルト:フルート四重奏曲 第1番 ニ長調 KV 285
録音:1956年11月18日
ベートーヴェン:弦楽三重奏曲 ハ短調 Op. 9-3
録音:1961年12月1日
フォーレ:ピアノ四重奏曲 第1番 ハ短調 Op. 15
ジャン・ピエール・ランパル (フルート), モニク・メルシエ (ピアノ)
録音:1962年11月21日
[CD 12]
ジャン・ロジェ=デュカス:ピアノ四重奏曲
ジャン・ドワイアン (ピアノ)
録音:1955年2月12日
モーリス・ジョベール:イタリア風三重奏曲 Op. 54
ジャン・ドワイアン (ピアノ)
録音:1960年6月14日
[CD 13]
モーツァルト
フルート四重奏曲 第1番 ニ長調 KV 285
フルート四重奏曲 第2番 ト長調 KV 285a
フルート四重奏曲 第3番 ハ長調 KV 285b
フルート四重奏曲 第4番 イ長調 KV 298
ジャン・ピエール・ランパル (フルート),
録音:1960年代, stereo
[CD 14]
モーツァルト
ディヴェルティメント 変ホ長調 KV 563
録音:1960年代
ガブリエル・ピエルネ (1863-1937)
弦楽三重奏のための3つの小品から
第1番 「パスキエ兄弟の名前に捧げる」
録音:1953年
[CD 15]
メシアン:時の終わりのための四重奏曲
アンドレ・ヴァセリエ(クラリネット), オリヴィエ・メシアン(ピアノ), ジャン・パスキエ (ヴァイオリン), エティエンヌ・パスキエ (チェロ)
録音:1956年6月
ジョゼフ・ボダン・ド・ボワモルティエ(1689-1755)
トリオ・ソナタ ニ長調, Op. 50 No. 6
ローランス・ブーレイ(ハープシコード) , ジャン・パスキエ (ヴァイオリン), ), エティエンヌ・パスキエ (チェロ)
録音:1952年12月
[CD 16]
モーツァルト:ディヴェルティメント変ホ長調 KV 563
録音:1935年6月
フロラン・シュミット:弦楽三重奏曲 ホ短調 Op.105
録音:1946年5月21&1946年12月3日
パスキエ・トリオ
[ジャン・パスキエ (ヴァイオリン), ピエール・パスキエ (ヴィオラ), エティエンヌ・パスキエ (チェロ)]
カテゴリ : ニューリリース | タグ : ボックスセット(クラシック)
掲載: 2020年10月30日 16:00