フランソワ・ラザレヴィチ&ジュスタン・テイラー~C.P.E.バッハ:フルート・ソナタ集
古楽器の味わいを妥協なく引き出してゆく名手二人、C.P.E.バッハ至福のデュオ
フラウト・トラヴェルソ(古楽器フルート)だけでなく民俗楽器にも通暁、フランス各地の伝統的なバグパイプやミュゼットの名手としても知られる俊才フランソワ・ラザレヴィチ。
ALPHAレーベルで幾多の名盤を制作してきた彼の共演者には、大バッハのソナタ集(ALPHA490)でのチェンバロの鬼才ジャン・ロンドー、アイルランド伝統音楽のアルバム(ALPHA234)での異才ヴァイオリン奏者デイヴィッド・グリーンバーグなど抜きん出た個性の持ち主が目立ちますが、今回は近年躍進目覚ましいフランスの古楽鍵盤奏者ジュスタン・テイラーとの録音となっています。
しかも大バッハの次男、個性という点ではこちらも申し分ないユニークな天才C.P.E.バッハの作品集は嬉しいリリース。父の多声音楽への関心を受け継ぎながら、刻一刻と変わりゆく人心の機微を音の響きへと変えてゆく多感主義的作風は時代に先駆けた存在感で、18世紀半ばの作品にしてロマン派を先取りするような瞬間があちこちに聴かれます。
彼を長く雇いながら冷遇し続けたフリードリヒ大王はフルートを愛奏し、フォルテピアノに普及当初から関心を寄せ続けた音楽愛好家。C.P.E.バッハがその宮廷で綴った作品を中心に、ラザレヴィチとテイラーは楽器の自然な響きの魅力を十全に引き出しながら、一瞬ごと音楽性に満ちたデュオを繰り広げてゆきます。
この二人の間にしか生まれえない音空間の味わいを、ALPHAならではの自然なエンジニアリングの響きで楽しめるのも嬉しいところ。奏者二人それぞれの音楽小宇宙を堪能できる独奏曲も収録されており、隅々まで聴き深め甲斐のある1枚に仕上がっています。
(ナクソス・ジャパン)
【曲目】
カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714-1788):フルートと鍵盤のためのソナタ集
1-3. フルートとオブリガート鍵盤のためのトリオ・ソナタ ニ短調 Wq 145/H 569
4-6. フルートとオブリガート鍵盤のためのトリオ・ソナタ ニ長調 Wq 83/H 505
7-9. 無伴奏フルートのためのソナタ イ短調 Wq. 132/H 562
10-12. フルートとオブリガート鍵盤のためのトリオ・ソナタ ハ長調 Wq 149/H 573
13-15. 鍵盤のための自由なファンタジア 嬰ヘ短調 Wq 67/H 300
16-18. フルートとオブリガート鍵盤のためのトリオ・ソナタ ロ短調 Wq 143/H 567
【演奏】
フランソワ・ラザレヴィチ(フラウト・トラヴェルソ)
使用楽器: ドレスデンのアウグスト・グレンザー(18世紀)製作のモデルによるアングレーム(フランス)のウジェーヌ・クライネン2002年製作の再現楽器
ジュスタン・テイラー(フォルテピアノ)
使用楽器: ウィーンのアントン・ヴァルター(1752-1826)製作のモデルによるディヴィショフ(チェコ)のポール・マクナルティ2017年製作の再現楽器
【録音】
2019年、ベーフェル、ベルギー
国内仕様盤 解説日本語訳…白沢達生
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2022年01月26日 00:00