ヴォーチェス・スアーヴェスによる『恋の詩』~ジャケス・デ・ヴェルト:後期のマドリガーレとカンツォネッタ
[Outhere Music 公式チャンネルより]
モンテヴェルディやマレンツィオの先駆者、北イタリアのフランドル楽派の奥深さを古楽シーン最前線から
早くからフェラーラのエステ家やパルマのファルネーゼ家といったイタリアの文化的名家に見出され、後年はマントヴァのゴンザーガ家に仕え若きモンテヴェルディの同僚になった後期フランドル楽派の重要人物、ジャケス・デ・ヴェルト。ミュンヘンのバイエルン選帝侯家に仕えたラッススとほぼ同世代ですが、その活躍の舞台は主として北イタリアで(一時は神聖ローマ皇帝マクシミリアン2世にも仕えていました)、貴婦人たちと浮名を流し醜聞も呼びながら、即興演奏と多声音楽作曲に長けた音楽家として時代に名を刻みました。
マドリガーレは彼が大きな貢献を果たした曲種の一つで、年長の大家チプリアーノ・デ・ローレと後輩のモンテヴェルディやマレンツィオの間にあって、詩句の繊細な表現を音にして精巧な多声の綾へと織り込んでゆく技芸は多くの同業者たちにも刺激を与えました。タッソやグヮリーニといった詩人たちとの知遇を通じて育まれた明敏な感性は、後に14世紀の詩人ペトラルカの美しい詩を音楽化するにあたっての新しい視点にも繋がります。
そうしたジャケス・デ・ヴェルト後年の充実作を重点的に集め、時にリコーダーやヴィオラ・ダ・ガンバ、撥弦楽器などを交えた自在な編成でこの作曲家の真髄に迫るのは、古楽研鑚の一大拠点バーゼルで学んだ俊才たちによるヴォーチェス・スアーヴェス。
一本筋の通った多声音楽再現への情熱が、意外にも少ないこの作曲家単体でのアルバムを瑞々しくも確かな解釈で満たしています。
イタリア後期ルネサンスの宮廷音楽に通じた音楽学の大御所イアン・フェンロンによるライナーノート(英・仏・独語)も端的かつ充実した内容。
(ナクソス・ジャパン)
『恋の詩』~ジャケス・デ・ヴェルト:後期のマドリガーレとカンツォネッタ
【曲目】
ジャケス・デ・ヴェルト(またはジャック・ド・ウェルト、1535-1596):
1. Voglia mi vienper dare al cor ristoro 心に安らぎが欲しくなって
2. Un jour je m’en allais ある日、わたしはスミレを摘みに
3. Vago augelletto, che cantando vai 囀る美しき小鳥よ、さあ
4. De qué sirve, ojos morenos 黒い瞳よ、何のために
5. Mia benigna fortunae ’l viver lieto 祝福に満ちた我が運名よ
6. Dica chi vuol, e ’l viver lieto やりたい奴は言え
7. Ricercare リチェルカーレ (ヴィンチェンツォ・ガリレイ〔1520/33-1591〕作曲)
8. Amor, che saiin qual stat’io mi viva 恋の神よ、わたしの生きざまを知っているからには
9. M’a punto Amorcon velenoso dardo 恋の神がわたしを毒の矢で射た
10. Quel rossignol, che sì soave piagne 甘やかにさえずる夜啼鶯が
11. Che fai, Alma ? – Dialogo à 7 何をしている、魂よ ~7声の対話
12. Datemi pace, o duri miei pensieri 安らがせてくれ、わが思考よ
13. Misera, quanto tempoindarn’ho speso 哀れね、わたしはどれほど時間をむだにしたのだろう
14. Tu canti e canto anch’io きみが歌えば、わたしも歌う
15. Non mi conosci tu ? – Eco à 6 わたしを知らないというのか~6声のこだま
16. Mi parto, ahi sorte ria / Partisti, ahi dura sorte わたしは去ろう、ああなんと残酷な運命
【演奏】
ヴォーチェス・スアーヴェス(古楽器&声楽アンサンブル)
【録音】
2021年7月2-6日 ラントガストホーフ・リーエン、スイス
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2022年09月07日 00:00