マグラネル&カペリャ・デ・ミニストレルスの新録音!『アラゴンの女王たち』~中世とルネサンス、ハンガリーのヨランダからフォワのジェルメーヌまで
欧州中世に強い影響力を誇ったスペインの一門と、その文化的影響力の広さを辿る
スペイン南東部のバレンシアに拠点を置き、中世からルネサンスにかけての音楽遺産を筋の通ったユニークなテーマに沿って発掘・紹介し続けている音楽学者=ガンバ奏者カルレス・マグラネル率いるカペリャ・デ・ミニストレルス。
今回は中世以来イベリア半島東部に拠点を置きながら、婚姻関係を通じて遠くバルカン方面や中近東まで影響力を誇ったアラゴン王家に光をあて、その覇権が及んだ地域の音楽遺産からヨーロッパ音楽の変遷を浮き彫りにしてゆくアルバムとなりました。
アンジュー家やフォワ伯家、カステーリャ王室、ナファロワ(ナバラ)王室、ポルトガル王室、さらにはハンガリー王家や十字軍国家なども巻き込みながら13~15世紀を席捲した一族の歴史を辿る中、おのずと中世のロンデルやヴィルレー、ドイツ語圏のミンネゼンガーの音楽やイベリア宮廷のカンティガ、さらにはアルス・ノーヴァを経てイタリアの初期マドリガーレへ……と、音楽史上の重要なポイントに自ずと一通り触れてゆくプログラムは何度も再訪したくなる奥深さ。
弓奏ビウエラとヴィオラ・ダ・ガンバを含む複数の弓奏弦楽器、古い形のギターやハープ、リュートなどの撥弦楽器にリコーダー、ショーム、ダルシマー、バグパイプといった素朴にして奥深い音色が美しい管楽器まで、異世界的な魅力を放つ中世楽器の響きとあいまって、ギヨーム・ド・マショーやスペイン・ルネサンス作品など古楽ファンなら多少は馴染みも感じるであろう演目さえきわめて新鮮に響きます。
マグラネルのチームの良さが最大限に生かされた音楽史アルバムと言ってよいでしょう。質感高く臨場感のある録音も秀逸。
(ナクソス・ジャパン)
【曲目】
1. 作者不詳(13世紀): Ave Maria dulcis et pia. Rondellus ロンデル「めでたしマリア様、お優しく慈愛に溢れた方」~バイボナ写本より
2. アダン・ド・ラ・アル(1237頃-1388以降): Robin m’aime ロバンはわたしを愛し ~『ロバンとマリオンの物語』より
3. シチリア王/エルサレム王シャルル・ダンジュー(1226/27-1285): Dum suprema melodia. Prosa 讃歌「至高の旋律に」
4. ヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデ(1170頃~1230頃): Nu alrest. Palästinalied パレスティナの歌「ついに始まる、人生の真価が」
5. 作者不詳(13世紀): Potestati magni maris. Conductus コンドゥクトゥス「あなたは大いなる力で大海を操り」~オルフェオ・カタラの写本 Ms1より
6. 作者不詳(14世紀): Ave Regina coerolum/Alma Redemptoris mater. Motete モテトゥス「めでたし天の皇后/贖罪主を育てた母なる方」~ラス・ウェルガス写本より
7. ギヨーム・ド・マショー(1300頃-1377): Douce dame jolie. Virelai ヴィルレー「優しく美しき婦人よ」
8. ポルトガル王ディニシュ1世(1279-1325): O que vos nunca cuidei a dizer. Cantoga カンティガ「おお、あなたにはこれまであえて言わなかったが」
9. ヤーコポ・ダ・ボローニャ(1340以前~1360以降): Un b el sparver. Madrigal マドリガーレ「羽根の白い立派な鷹が」
10. 作者不詳(14世紀): Or sus, vous dormés trop. Virelai ヴィルレー「おや、寝坊が過ぎるのではありませんか」
11. 楽匠エギディウス(生歿年不詳、14世紀に活躍): Roses et lis. Balada バッラータ「薔薇と百合が」~オルフェオ・カタラの写本Ms 1より
12. ヨアネス・グラネティ(生歿年不詳、14世紀に活躍): Kyrie Summe clementissime. Kyrie キリエ「主よ、いとも慈悲深き方よ」~オルフェオ・カタラの写本Ms 2より
13. 作者不詳: Pangat chorus in hac die。Prosa 讃歌「その日、合唱は歌声をあげ」
14. 作者不詳(15世紀?): Alburquerque, Alburquerque. Romance ロマンセ「アルブルケルケ、アルブルケルケ」~『王宮の歌集』より
15. ペレ(またはペドロ)・オリオラ(生歿年不詳、1440-1484頃に活躍): O vos homines qui tarsitis. Berzellatta 笑話「おお、道行く人よ」
16. 作者不詳(15世紀): La Spagna. Dança 舞曲「ラ・スパーニャ」~ボローニャ写本より
17. フアン・デル・エンシーナ(1468-1529): Una sañosa porfía. Romance ロマンセ「不実な女性に」
18. ルイス・デ・ミラン(1500頃-1561頃): O gelosia, d’amanti orribil freno. Soneto ソネット「おお嫉妬よ、恋人たちの恐ろしき邪魔者よ」~『エル・マエストロ』より
【演奏】
マリア・ヨナス、エリア・カサノバ、ベアトリス・ラフォン(歌)
ダビド・アンティク(各種リコーダー)
カペリャ・デ・ミニストレルス(声楽&古楽器アンサンブル)
カルレス・マグラネル(ビウエラ・ダルコ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、指揮)
【録音】
2022年1月13-16日、サンタ・マリア教会、レケナ(スペイン東部バレンシア地方)
収録時間: 76分
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2023年03月24日 00:00