アンシェル・ブルシロウ&フィラデルフィア室内交響楽団『コンプリート・RCA・アルバム・コレクション』(6枚組)
名コンサートマスター、アンシェル・ブルシロウが設立した「フィラデルフィアの第2のオーケストラ」の全録音がここに復活!
フィラデルフィア室内交響楽団(チェンバー・シンフォニー・オヴ・フィラデルフィア、日本では「フィラデルフィア室内楽団」とされていた)は、1965 年にフィラデルフィア管弦楽団のコンサートマスター兼副指揮者であったアンシェル・ブルシロウ(1928-2018)によって設立された室内オーケストラ。「フィラデルフィアの第2のオーケストラ」などと称され、華々しい活動を繰り広げましたがわずか2シーズンで解散、今では幻の室内オケとなりました。当ボックスではその短い期間にRCAに録音した6枚分のLPが世界で初めて復刻されています。
創設者のブルシロウはフィラデルフィアに生まれ、カーティスでジンバリストに師事。ニューオリンズ響、クリーヴランド管を経て、1956年からフィラデルフィア管のコンサートマスターに就任した名ヴァイオリニスト。オーマンディ指揮のヴィヴァルディ「四季」、R=コルサコフ「シェエラザード」、R.シュトラウス「英雄の生涯」のコロンビア録音ではソロ・ヴァイオリンを担っています。一方で、フィラデルフィア音楽アカデミーで本格的に指揮も学び、モントゥー、セル、オーマンディの薫陶を受けた音楽家で、指揮活動への意欲やみがたく、1966年にフィラデルフィア管を退団し、フィラデルフィア室内響を組織することになりました(2015年には音楽家生活中の興味深いエピソードをまとめた自伝『指揮者を撃て』を出版しています)。
ブルシロウは、36名の常設メンバーをオーディションで1,000人以上の音楽家の中から選び抜き、優れた奏者で同団を組織。オーケストラは1966年から1968年まで、シーズンにして約2年半存続し、200 回以上のコンサートを開催しましたが、1968年に運営資金が続かず解散してしまいました。
これらの録音当時は、フィラデルフィア管はコロンビアの専属だったため、それに対抗するかのようにRCAがフィラデルフィア室内響を録音したのは録音史上実に興味深い点です(そしてこのフィラデルフィア室内響の録音が終わってから間もなくフィラデルフィア管はRCAに復帰することになります)。LP初出時には、「稀有なクオリティのオーケストラ」(『ハイ・フィデリティ』誌)と賞賛されました。デビュー盤となったブラームスのセレナード第1番の評では『新しいオーケストラの優れた能力を刻むのに最適の作品。木管と金管の首席奏者は全員輝かしい技量を誇っている』と絶賛されています。ブラームスに続いては、当時の録音としては比較的珍しい作品が選ばれているのも特徴です。チャイコフスキーの組曲《モーツァルティアーナ》とアレンスキーの《チャイコフスキーの主題による変奏曲》では「ブルシロウは作品を完璧に把握し、奏者たちの反応も美しい)(『ハイ・フィデリティ』誌)と称賛されています。またトスカニーニの愛奏曲だったケルビーニの交響曲をハイドンの知られざる交響曲と組み合わせや、師モントゥーゆずりともいえるラヴェル、イベール、フランセのフレンチ・プロ(「フレージング、テクスチャー、音色に関して真の文体上の確信を持っている)とは『ハイ・フィデリティ』誌の評)、リヒャルト・シュトラウスの《町人貴族》、ヴォルフの《イタリアン風セレナーデ》などを録音しました。
またオーマンディがその音楽をサポートしたフィラデルフィアを拠点とする作曲家、リチャード・ヤルドゥミアンによる新しい神聖な合唱作品《来たり給え、創造主なる聖霊よ》の初録音もこの時代の思潮を反映していると言えるでしょう。この曲は、メゾ・ソプラノ、合唱団(または会衆)、オーケストラのために書かれ、1963年のバチカン公会議の決定を受けて、著名なアメリカの作曲家による英語の母国語で作曲された最初のミサ曲でした。
今回のアルバムは全て24bit/192kHzテクノロジーを使用してオリジナルのアナログ・マスターテープからリミックスおよびリマスターされ、初CD化となります。米国初出LPノジャケットデザインによる紙ジャケットと発売当時のレーベル・デザインを採用し、詳細な録音データを網羅したトラックリストを掲載したオールカラー・ブックレット付き。
(ソニーミュージック)
収録内容
<CD1>
ブラームス:セレナード 第1番 ニ長調 Op.11
[録音]1967年3月3日、フィラデルフィア、タウンホール
<CD2>
リチャード・ヤルドゥミアン:来たれ、創造主なる聖霊よ
[共演]リリ・コーカシアン(コントラルト)
フィラデルフィア・チェンバー・シンフォニー合唱団
フォーダム大学グリークラブ団員
トーマス・モア大学女声合唱団員
[録音]1967年4月1日、フィラデルフィア、タウンホール
<CD3>
チャイコフスキー:組曲第4番 ト長調 Op.61『モーツァルティアーナ』
アレンスキー:チャイコフスキーの主題による変奏曲 Op.35a
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番Op.11 ~ 第2楽章:アンダンテ・カンタービレ
[録音]1967年3月3日、1968年1月8日、1967年10月12日、フィラデルフィア、タウンホール
<CD4>
ケルビーニ:交響曲 ニ長調
ハイドン:交響曲第60番 ハ長調 Hob. I:60『うかつ者』
[録音]1967年3月3日、10月13日、フィラデルフィア、タウンホール
<CD5>
ラヴェル:クープランの墓 M.68a
フランセ:小オーケストラのためセレナード
イベール:交響組曲『パリ』
イベール:カプリッチョ
[録音]1967年10月13日、1968年1月8 & 10日、フィラデルフィア、タウンホール
<CD6>
R.シュトラウス:『町人貴族』組曲 Op.60
ヴォルフ:イタリア風セレナーデ
[録音]1968年1月8日、1967年10月13日、フィラデルフィア、タウンホール
【演奏】
アンシェル・ブルシロウ(指揮)
フィラデルフィア室内交響楽団(チェンバー・シンフォニー・オヴ・フィラデルフィア)
カテゴリ : ニューリリース | タグ : ボックスセット(クラシック)
掲載: 2023年10月06日 12:00