WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.276
フィル・ウッズ『ウォーム・ウッズ』(1958)
フィル・ウッズ(as)
ボブ・コーウィン(p)
ソニー・ダラス(b)
ニック・スタビュラス(ds)
1957年9月11日、10月18日、11月8日録音
曲目:
01.イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ
02.イージー・リビング
03.アイ・ラヴ・ユー
04.スクィアズ・パーラー
05.ウェイト・ティル・ユー・シー・ハー
06.ワルツ・フォー・ア・ラヴリー・ワイフ
07,ライク・サムワン・イン・ラブ
08.ガンガ・ディン
【アルバム紹介】
1.ホットなプレイが魅力のフィル・ウッズの1958年のリーダー・アルバム
2.正攻法なアルト・サックスのプレイはチャーリー・パーカーの後継者として認知
3.ワン・ホーン・カルテットの演奏で聴かせるストレートな一作
今回は前回のポール・デスモンドに続いて名アルト・サックス奏者を取り上げますが、クールなポール・デスモンドとは対照的なホットなプレイで魅了したフィル・ウッズの1958年のリーダー・アルバムを紹介します。
フィル・ウッズは1931年生まれで、マンハッタン音楽学校やジュリアード音楽院でジャズを学び、50年代に入って自身のバンドで活動を始め、徐々にレコーディングにも参加するようになりました。その正攻法なアルト・サックスのプレイはチャーリー・パーカーの後継者として認知されてゆきました。
本作は活動初期にあたる50年代後半のレコーディングによるリーダー・アルバムで、ワン・ホーン・カルテットの演奏で聴かせるストレートな一作です。
参加メンバーはピアノには、トランペットのドン・エリオットとの共演作などで知られるボブ・コーウィン。ベースのソニー・ダラスとドラムスのニック・スタビュラスは、この時期のフィル・ウッズとは常連の顔ぶれである二人。
楽曲はスタンダード中心で、4曲目と6曲目はフィル・ウッズのオリジナルになっています。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
ストレートなブロウで聴かせる“イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ”。
この曲はピアニストのデイヴ・ブルーベックが書いた名曲で、数多くの演奏が存在するほどの、今やスタンダード化した1曲ですが、本作のレコーディング時はまだ書かれて数年しか経っていない新曲であり、ここでの演奏はそんな時期の名演のひとつとなっています。
フィル・ウッズはホットなプレイが特徴のアルト・サックスとはいえ、この曲に関しては、アルバム・タイトルにある“ウォーム”(あたたか)な感覚が感じられる演奏になっています。
短いイントロの後、フィル・ウッズのアルト・サックスがテーマ・メロディを丁寧に、歌心いっぱいに奏でてゆきます。ソロに入ると、表情豊かなフレージングを次々と繰り出して進行します。聴いていると、アルト・サックスってこんなにいろいろな表現の仕方があるんだと思えます。ソロが一段落すると、ボブ・コーウィンのピアノのソロへと移行しますが、端正なアプローチが光るプレイで聴かせます。やがてテーマに回帰し、最後は、エンディング近くにちょっとしたアドリブをかませながら洒落た終わり方をします。
フィル・ウッズはジャズとは違ったジャンルでの名プレイでも知られている存在で、それがシンガーソングライターのビリー・ジョエルが1977年に放ったヒットソング“素顔のままで”。この曲での見事なフィル・ウッズのプレイは何度聴いても素晴らしいとしか言いようがありません。
国内盤Blu-spec CD2
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2024年05月17日 10:00