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インタビュー

YUKI

ジュディー・アンド・マリー解散から約1年、YUKIが動いた。ファースト・アルバム『PRISMIC』に収められた彼女の歌は、なにか大きなお城から解放されたかのような奔放さ、そこから滲み出る純な魂と慈愛に満ちあふれている!

すごい単純、ものすごい単純

「ジュディー・アンド・マリーが終わることになったのは、本当にいろんな要因があったから。私一人が、もうやめようっていったわけじゃなくて、いろんなことが、本当にたくさんあって、それで終わったことだったけど。ただひとつ、私がずっとなにかを求めていたことは確かだなって。今振り返ると、本当にそれは思いますね。別に目標にはしてなかったんだけど、20代のうちにソロを作れたのも……やっぱり自分の中にあるものをグワーッて出すようなことをやりたかったんじゃないかなって。うん。きっと、こういうことをやりたかったんでしょうね」。

ジュディー・アンド・マリーの解散から約1年。YUKIのソロ・アルバム『PRISMIC』がついに到着した。冒頭で本人もあきらかにしているように<自分の中にあるもの>を放出することに重きを置いて作られた本作は、良く言えば自由気まま、悪く言えば散漫。まさにコンセプチュアルという概念とは対極に位置するような作品に仕上がっているのであった。

「<この作品は外にお出かけするときに聴いて欲しい>とか、そういう感じも一切なかったんで。ていうか、そもそも、そこまで器用なこと、私できませーん!っていう(笑)。自分でイチから作品を作るのは初めてだったから、とにかく衝動でやるしかなかったんですよね。だから、本当になにも考えてなかったんです。すごい単純、ものすごい単純。けどね、そういうものにこそ実は私の魂が出ちゃうんじゃないかな。ツルッと作ったものほど誤魔化せないっていうか。例えば歌詞に関しても、あとから直したりって本当にしてないので」。

推敲ゼロ。その実、表現欲は無限大。だからこそ、伝えたいモノやコトが、彼女が感じたそのままの感覚で温度で、聴き手にしっかりと伝わってくる。

「うん、そこも単純明快。その点、ジュディー・アンド・マリーはすごくビシーッとした隙間のないポップスをやってたっていうか。まあ、それは今考えても完璧だったと思いますけど。でも、そういう枠が全くない状態になると、私ってこういうふうになるんだ!っていうことに今回気が付いて。一人で歌うことになったら私ってこういう歌を歌うんだ!?って。 今回の取材では<あえて前と違う感じにしようと思ったんですか?>って本当によく訊かれるんですけど、そういうことができるんだったら前からやってるよ、っていう(笑)。だから自分に正直にやったら、こうなりましたとしか今は言いようがないんですよね」。

彼女が敬愛するヨーコ・オノの著書名をそのまま引用するならば、ズバリ<ただの私>といったところ? YUKIという、いち女性シンガー──さらに言ってしまうと、同い歳ぐらいの女性にくらべ作曲や作詞の能力が秀でた、一人の女性──によって描かれた、強さも弱さも泣きも笑いも全てをひっくるめた等身大の姿が、そこにはありありと刻み込まれているワケで。

「内面にあるものをツルンと出すことで自分自身をまずは満足させたいっていうところも少なからずあったんだけど……。それを人前に出すっていうことも、そりゃあもちろん考えましたよ。<大丈夫、YUKI? これ出しちゃってもいいよね!?>って。単なるエゴにならないように、一応、自問自答してから(笑)」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年04月11日 03:00

更新: 2003年03月07日 19:20

ソース: 『bounce』 230号(2002/3/25)

文/望月哲