ウルフルズ
ほんの少し冬眠していた世紀末を経て、“明日があるさ”と清々しく目を覚ましたクマさんならぬウルフルズ。のち、シングル“がむしゃら”“笑えれば”で精気完全復活、いよいよアルバム『ウルフルズ』で、みんなを驚かす時が!
「どういう音楽をやろうと思ってウルフルズを始めたか、そしてこれからどういう音楽をやっていくか、ってことがすべて入っている」
そんなアルバム『ウルフルズ』。まったくもって、トータス松本(ヴォーカル/ギター)のこの発言まんまの内容なんである。正真正銘、タネも仕掛けもない、ウルフルズ的ココロが詰まった音を乗せて、トータス顔ポットならぬ、3人の顔をした人面機関車がひた走る快走作だ。
振り返ればいつも彼らがいる。そんな結ばれ方をしてた僕らとウルフルズの関係においても、この露わな姿での登場ぶりには少し意表を突かれた。ゴンッとくるサウンドも彼ら独特のメンタリティーも、いま一度再確認がおこなわれたかのような新鮮さをもって鳴り響くのだ。
「僕も制作中に何度か思った。〈こんなウルフルズらしいもの作ってんねやな〉って。久しぶりな気ぃしたもん」(トータス)
「でもね、理想。みんないい意味で意表突かれると思うよ」(ウルフル ケイスケ、ギター)
そう。なんで俺たちはここに来たんだ?なる問いかけがアルバムの端々から聞こえてくる、というか。この心境への到達は、2001年の『ベストだぜ!!』をリリースしたことの影響大だと思われるのだが。
「うん。これまで自分の昔の曲って恥ずかしいから避けてたけど、『ベストだぜ!!』を聴いて、思い通りのものが描けているものと、なっていないものがはっきり見えた。 でも銀次さんとやった仕事はことごとくうまくいってて」(トータス)
そうだ、ここにきてプロデューサー伊藤銀次のクレジットが彼らの名前と並んでいるのだ。
「彼と組んだ曲は音から歌詞からいい感じにコテコテしてるというか。で、もう一回誘ってみよか、となったんですよ」(トータス)
「6年前は、銀次さんが〈こうやったほうがええ〉って言ってたことを、わからんままやってたところもあったんやけど、今回はよーく見えた」(サンコンJr.、ドラムス)
「〈世界一ウルフルズのことわかってる〉って銀次さんは言うんですけど、ホンマそう。でもいちばんの理解者はこの僕なんですけどね(笑)。多分、彼が自分でやりたかったことなんですよ、ウルフルズの音楽って(笑)。彼が見てるトータス松本の顔は伊藤銀次になってるはずですよ(一同爆笑)」(トータス)
しかし、ただの原点回帰ということじゃ済まない。「スタンダードにしたる!」(トータス)というぐらい楽曲に込めた執念と、「とにかく曲作りに時間をかけた」(トータス)という99年の前作『トロフィー』発表後のブランクは、いろんなものを振り落とすために必要だったという。
「“ヤング ソウル ダイナマイト”でいくとこまでいった、っていうかね。あれ以上やったとしたら……まずイメージを先行させて、そこから組み立てていく方法でしか曲が出来なくなっていくんですよ。いつも〈一風変わったアプローチの曲でくる人たち〉って印象は、あんま、ねぇ。 やっぱ(聴き手に)信頼されなあかんし。まず〈いい音楽やってる人たち〉っていうか〈自分たちを信じて突っ走ってる人たち〉っていういうのを確立したいと思って」(トータス)
その賜物としての名曲“笑えれば”の誕生。当初、今回何曲か収録されていた楽曲同様、LAセッションにおいて吹き込まれたナンバーらしいが「やっぱ日本人の血の感じがすごい大事」(トータス)と気づいて再録音されたという。この、奥のほうで涙がブランブランしている感じ。これやんか!と快哉をあげたい気持ちになるわ。「聴いてて〈うわ~、思い出すからやめてくれぇ!〉っつう恥ずかしい感じは大事やと改めて思う」と話すトータスの想いは、今作の全曲を照らしており、〈可笑しくてやがて哀しい〉気分にさせるウルフルズの音楽の魅力が眩く光る。こいつは〈裸のロック宣言〉やね、と言ったところ……。
「というより、僕らにとっては〈ウルフルズ宣言〉やけどね」(トータス)と返ってきた。なるほど、かっちょええフレーズ!
「ぼちぼちウルフルズって〈J-Pop〉みたいにカテゴリー分けして欲しいわ。〈J-ウルフルズ〉とか(笑)。ええ新人でてきたら〈お、ウルフルズ系登場!〉みたいなね(爆笑)」(トータス)