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インタビュー

Britney Spears

ブリトニーが変わった!時代性と深みをセクシーにラッピングした力作『Britney』は〈成長〉の一言では片付けられないほどの大傑作となってあらわれた。可愛いだけじゃないの?なんて、もう誰にも言わせないわよ!

 ファースト・ネームだけで名が通る存在。たとえば、ジャネット、ホイットニー、マライア、聖子、もっと遡れば、バーブラ、ダイアナ、アレサ、ひばり。そして、時として彼女たちはそのファースト・ネームをアルバム・タイトルに冠する。ホイットニー・ヒューストンはフル・ネームのアルバムでいきなり頂点に登り詰めた後に『Whitney』をリリースした。ジャネット・ジャクソンはみずからの姓がもつ血統の呪縛から逃れるために、もっともパーソナルな一枚を『janet』と名付けた。マライアは……まだだ。そして、ついにブリトニー・スピアーズもみずからのアルバムに『Britney』とサインしてリボンをかけることになった。

彼女はこれまで、リード・シングルの曲名をそのまま無頓着にアルバム・タイトルとしてきた。べつに、今回の“I'm A Slave 4 U”を採用したらアルバムのイメージを限定しかねないから、という理由だけではないだろう。

「ええ。今回は自分自身をもっと前面に出したかったってことよ。それに、前作以上にソングライティングに関わって、私らしさがうまく出せているから、っていう理由もあったわ。自分で書いた曲じゃなくても、それが本当にいい曲で自分の名前を付けたくなるものだったらもちろん歌いたい。私はプロのソングライターってわけじゃないから。だけど曲を書くこと自体がすごく自分のプラスになるのよ。ちゃんと心の中に自分の考えがあれば、イメージとか実感とか、私らしさを曲に出しやすくなる」。

その〈らしさ〉についてもう少し詳しく訊くと、それは内面的な部分に加えて趣味嗜好の反映という意味でもあるようだ。

「そうね、クラブに行って踊るのが大好きなのよ。お酒は飲めないけど(笑)。だから、自分のアルバムに自分の好きなビートがあって、自分が踊りたくなるようなものにしたかったの。自分も共感をもてるようなものにしたくてね。それに私、ヒップホップとR&Bにすごく刺激を受けてるのよ。今回プロデュースを依頼したネプチューンズはまさにそういう人たちよね。だから、私の声にあるポップなフレイヴァーが彼らお得意のビートに合わさったら、きっといままでになかったような新しいサウンドが生まれるはずだって思ったの」。

実際『Britney』のどこに満足したか、ということでは彼女の話す通りだ。しかも、これまでの様式美的な分厚いサウンドから脱したサウンド・フォーマットに合わせて、彼女のヴォーカルも格段の成長を遂げている。前述“I'm A Slave 4 U”でのプリンス風味は言うに及ばず、同じくネプチューンズによるセクシュアルな“Boys”、さらにはジャネットの“Doesn't Really Matter”からオリエンタル風味を差し引いたようなロドニー・ジャーキンス製の純正R&B“Let Me Be”、軽快で清涼な2ステップ調の“You Take Me”など、こういうトラックで彼女の声が聴きたかった!という瞬間があっさりと具現化されているのだ。この、シンプルでいて、彼女クラスのアイドルになると難しいワン・ステップを踏み出させたのにはジャスティン・ティンバーレイク(イン・シンク)の存在も大きかったはず。

「うん、音楽的には彼に間違いなくインスパイアされてるわ。ジャスティンはヒップホップやR&Bが大好きですごく詳しいし、いっしょに過ごしていると自然にたくさん聴くことになるのよね。そういう影響はあるわね。あとはダンスの仕方とか……もうナニからナニまでよ。わかるでしょ(笑)。彼はいつだってしっかりした意見をもっているし、本当に心のきれいな人よ。ものすごく愛してる。神様に感謝しているわ!」

全世界に数千万人はいる双方のファンならキレそうになるところだが、まあそれは置いておく。そんな
彼の尽力は、初のデュエット曲“What It's Like To Be Me”のプロデュースに加え、イン・シンクの“Pop”でものすごい成果を挙げた新鋭プロデューサーBTの起用を提案したことにまで至る。さらに、彼女がセクシーさを増進しているのにも彼の影響は強いと思われ……。

「そんなこと知らないわよ(笑)。自分では2年前と同じ人間だって思ってるわ。それに、私がセクシーだとしても、それは恥じるべきことじゃないと思うの。セクシーっていうのは美しいことよ。だからそう呼ばれるならとっても嬉しい。私としては自分がそうだとは思えないけどね(笑)」。

ご謙遜を。ともあれ彼女は、前作を踏襲したマックス・マーティンによる鉄壁のポップ・チューン“Overprotected”や、ダイドを迎えたバラード“I'm Not A Girl, Not Yet A Woman”などの持ち札ももちろん握ったままだ。

「以前の自分から逃げたいとかは思っていないのよ。ただもっと前に進んで自分自身になりたいだけでね。どちらが好きかはみんなの決めることだし、私にはどうにもできない。もちろん気に入ってくれたら素晴らしいけど。前の2枚のアルバムは、実際あの当時の私そのものだと思っているわ。だけど新作はもっと私らしいの」。

また、ロックの名曲カヴァーに取り組んでいるのも、“Satisfaction”を歌った前作からの流れだ。今回彼女が選んだのは、ジョーン・ジェット&ブラック・ハーツの“I Love Rock'n Roll”。Dragon Ashがネタにしたことでも有名なアノ曲を、自然と彼女はみずからの声に整合させている。

「あの曲って、自分を堂々と押し出してバッド・ガールみたいにガンガンいく曲でしょ。それに私はジョーン・ジェットがホントに大好きだったから。ロックは大好きよ!ときどき夜中にそういうのを大きな音でかけて騒いだりしたくなるのよね。ロックなら、クリードとか、AC/DC、エアロスミスなんかが好きよ」。

今年はそのエアロスミスやマイケル・ジャクソンら大物とのステージ共演が相次ぎ、もうアイドルというより、個の確立された女性シンガーという印象を受ける。先ごろのテロ事件被害者へのチャリティー・ソングのほとんどに参加しているのも、〈アメリカ代表〉的な立場を結果的に証明するものだ。さらに、初の主演映画の撮影も終わったばかりで、この後はワールド・ツアー。そんな多忙なブリトニーだが、オフはジャスティンとさぞかしまったりと……。

「お休みのときは家族とのんびりしたり、ドライヴしたり、トランポリンをやったりして楽しんでいるわ」。

トランポリン……。やはりアイドル、というしかない?

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年04月18日 15:00

更新: 2003年03月07日 18:59

ソース: 『bounce』 226号(2001/10/25)

文/轟 ひろみ