インタビュー

関美彦(2)

海とか旅を感じさせるものを作りたくて

 それをまた絶妙のユルさに帰結させるのが俊英サウンド・デザイナー=曽我部の役割。TB-303で刷新したベーシック・ビーツに、ティミー・トーマス、マーティン・デニーなどなど、冴えまくるサンプル・ソースを絡めて、ヒップな気分も上々にファンタスティックを誘い出していく。で、その行き先は……。

 「なにか海とか旅を感じさせるものを作りたくて。自分の好きなものがそういう要素を含んでいることに気がついたんです。荒井由実の『ミスリム』とか、ミルトン・ナシメントのファースト(『Courage』)とか、そういうものに通じる感じって無条件に好きだから。その気持ちが先行して波の音ばっかり入ってるんだけど(笑)」

 そして海へ出た夏の旅のラストを飾るのが、なんとTLC“Diggin' On You”のフォーキー・カヴァー。しかも意表を突きながらもここに本音を託すなんて、もう隅に置けません。

 「いまの音楽でも、オルタナっぽいロックよりR&Bみたいなもののほうが好きだったりするんですよ。だから椎名純平とか平井堅とかSMAPとか、心の中ではあんなふうにやってみたいな、って気持ちがあって。前回はそういうテイストがぜんぜん出てなかったんで、今回そういうものがちょっと出せてよかったなと思いますね。でも、そういうつもりで作っても全然タイトにならないんで、やっぱり自分はこういう人なんだなあと自分でもよくわかった(笑)」

 たとえばスクリッティ・ポリッティのアプローチとか、ブラックのイディオムをダイレクトに使わないヤング・ソウルっていうのが、実はいちばんリアルだったりするんじゃないでしょうか? サニー・スカイ・ブルース好きの僕らにとっては。

文中に登場するアーティストの作品紹介。

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掲載: 2002年04月25日 18:00

更新: 2003年03月07日 18:20

ソース: 『bounce』 226号(2001/10/25)

文/萌木 里