インタビュー

2001年の……を感じさせるシンガー・ソングライター

 街の空気、その温度があきらかに変わってきていることを感じる、いまこの季節。 一年の終わりがたしかに近づいてきているのに、今年は彼らからの便りがない。 彼ら――サニーデイ・サービスが毎年届けてくれていた便りによって、僕らは感動し、一年一年、時が過ぎていくことを実感していたものだ。 そんな彼らの便りが届くことがないいま、彼らの匂いを少しでも湛えているものを求めてしまうのは、サニーデイ・サービスの音楽に心酔していた者にとって、避けられない行為なのかも知れない。

関美彦と柳田久美子。このふたりのシンガー・ソングライターは、曽我部恵一がプロデュースを手掛けたということもあって、サニーデイ・サービスの匂いを嗅ぎとらずにはいられない存在だ。 ふたりともサニーデイ・サービスゆかりのミュージシャンたち――高野勲(キーボード)、伊賀航(ベース)、木暮晋也(ギター)ら――に支えられている、ということもあるが、なんといってもその歌声自体に、サニーデイ・サービス=曽我部恵一と通ずる〈こころ〉を、まず感じてしまう。

 とりわけ関の新作は、その歌声もさることながら、サニーデイ・サービスの最終作『LOVE ALBUM』のごときヴァラエティーに富んだサウンド・デコレーションが施され、〈サニーデイ・サービスが新しいアルバムを作っていたら……〉なんていう、かなわぬ妄想まで掻き立たせるから、なんだか……。

 季節の便りが届かなくて、心にぽっかり隙間ができてしまった人は、いつもの年とひと味違った形で〈今年のサニーデイ・サービス〉を体験してみてはいかがだろうか。というか、早く聴きたいものですよね、曽我部自身の歌も。


2000年にリリースされた関美彦のファースト・ミニ・アルバム『Five Easy Pieces』(ミディクリエイティヴ)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年04月25日 18:00

更新: 2003年03月07日 18:20

ソース: 『bounce』 226号(2001/10/25)

文/久保田 泰平

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