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インタビュー

Rob Zombie

ゾンビ復活!! ホワイト・ゾンビ解散を経てリリースされるソロ新作『The Sinister Urge』は、トリックなしのライヴ・サウンドが豪快に炸裂!!

 史上最強のゾンビ参上!――まるでホラー映画のキャッチ・コピーのようだが、ロブ・ゾンビのセカンド・ソロ・アルバム『The Sinister Urge』には、そんな快哉を叫びたい。

98年に発表したファースト・ソロ・アルバム『Hellbilly Deluxe』は、ホワイト・ゾンビが活動を休止している間に暇を持て余して作ったというだけあって、打ち込みが多用されたエレクトロニックな風合いの作品だった。しかしその後間もなくホワイト・ゾンビは正式に解散、つまり今作がロブの本格的なソロ・キャリアのスタートを飾る作品となるわけで、今回は前作で多少不完全燃焼の感があったサウンドのライヴ感を大切にすることをいちばんのポイントに、さらにパワフルな作品を作り上げた。ロブいわく

「70年代のアルバムのようなサウンドにしたかったんだ。キッスの『Destroyer(邦題は〈地獄の軍団〉)』とかアリス・クーパーの『Welcome To My Nightmare』のようなサウンドにね。あのころはすべてがトリックのないライヴ・テイクだっただろ」。

そしてそのダイナミックなサウンドの創出に一役買ったのが、リンプ・ビズキットのDJリーサル、メソッド・オブ・メイヒムのトミー・リー、スレイヤーのケリー・キング、ミックスマスター・マイク、オジー・オズボーンなどのロブと旧知の実力派プレイヤーたちだ。

「それぞれの曲に合ったゲストを入れたらおもしろいなって思ってさ。各自に合った曲を選んで参加してもらったんだ。オジーが歌った曲にしても、自分でヴォーカルを入れた後で〈もしかしてオジーに参加してもらったら、もっといい曲になるかもな〉って思って声をかけたんだよ」。

 しかし、そんな豪華なゲスト陣との共演さえも、この圧倒的な完成度を誇る楽曲群の前では、ほんのオマケに過ぎないとさえ思えてくる。キャッチーなリフを中心にしたコンパクトな曲展開は、凡百の流行性ヘヴィー・ロックとは一線を画する、ポップ・ミュージックとしての普遍性をもつものだ。これはロブが、前述のキッスやアリス・クーパーと並び、ポール・マッカートニーなどのメロディー・メイカーを音楽的ルーツとして持っていることとも関係があると思う。

そして、なんと言ってもロブ・ゾンビの魅力と言えば、存在そのものがエンターテイメントであること。みずからをゾンビとして戯画化し、常に〈いかに人を楽しませるか〉に心を砕くエンターテイメント精神は他者の追随を許さない。最新シングル“Feel So Numb”のプロモ・クリップを観る限りでは、今回はわりと素に近い姿をしているが、ホラー・テイストとアメコミに彩られたジャンクな世界観は健在だ。昨年はその趣味が高じて、ホラー映画「The House of 1,000 Corpses」(1,000人の死体の家)で監督デビューも果たしている。元々音楽よりも映画好きの少年時代を過ごし、4,000本のホラー映画コレクションを持つロブだけに、この映画にはロブ・ゾンビの美学が余すところなく盛り込まれているというウワサ。残酷描写が多いとの理由で公開のメドは立っていなかったが、ようやく2002年中にはお目見えする予定とのこと。あなたの世界って、まるでディズニーランドのホラー・ヴァージョンみたいですよね、と言うとロブは笑いながら

「子供のころに初めてディズニーランドに行った時、ホーンテッド・マンションがすごく気に入っちゃって、ずっとこれが続いたらいいのに、って思ってさ。たぶん俺がやってることのすべては、あの状況を終わらせないようにするためのものなんじゃないかな」

と答えた。出口のないホーンテッド・マンション――『The Sinister Urge』は〈聴くテーマパーク〉と言ってもいいのかもしれない。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年05月30日 18:00

更新: 2003年03月03日 21:56

ソース: 『bounce』 227号(2001/11/25)

文/美馬 亜貴子