インタビュー

東京スカパラダイスオーケストラ

〈歌もの三部作〉のシングル・ヒットもあって、前評判&メンバーのテンションはすこぶる上々の〈2002年度版〉スカパラ。そんな〈イイ感じ〉が、およそ2年ぶりとなるニュー・アルバム『Stompin' On DOWN BEAT ALLEY』にギュ~ッと封じ込められているもんだから……!!

陽気でノリは最高、盛り上がるにはもってこいの愛すべき音楽、スカ。日本でも着実に形成されているスカ・シーンに対する東京スカパラダイスオーケストラの貢献度は誰しもが認めるところ。しかし、そんな大きな存在であるはずの彼らに、妙な敷居の高さは感じない。むしろ親しみやすさに溢れている。そんな彼らが、なんともゴキゲンな新作を完成させた。

「前作『FULL-TENSION BEATERS』では、いろいろ持っていたヴァリエーションを〈絞った〉方向性でやったんです。それからライヴ盤『Gunslingers』を出して、ヨーロッパ・ツアーに行って。今度は絞り込んだ世界観、絞り込んだなかからまた広げていこうと」(NARGO、トランペット)。

「そのひとつとして〈歌もの三部作〉があって。“美しく燃える森”とかを聴いてスカパラに興味を持った人が、今度はいままでやってきたインストものにも親しんでもらえればっていうのがありましたね」(北原雅彦、トロンボーン)。

 オリジナル・アルバムとしては通算9枚目になる『Stompin' On DOWN BEAT ALLEY』は、キレ味鋭いナンバー、サンバ・テイスト、良いムードのオーセンティック・スタイルなどなど、スカパラの持ち味を存分に発揮したインスト・チューンがずらりと並び、田島貴男、チバユウスケ、奥田民生をフィーチャーしたヴォーカル・トラック
(歌もの三部作)がポイントポイントで入ってくるという、バラエティーに富んだ内容になっている。

「タイトルは〈ダウンビート横丁にいらっしゃい!〉って感じ(笑)。メンバー10人が10人、違う音楽が好きだから自然と色が付いてくる。前のアルバムを踏まえたうえで聴くと、すごくおもしろいものが見えてくる。バンドは生ものだからね」(NARGO)。

 彼らは根っからのライヴ・バンド。収録曲のほとんどは、すでにライヴで鍛え抜かれたグッド・アスリート状態なのだ。

「今回は、ただきちんと演奏するのとは反対に、〈Take 1〉をOKにした曲が多かった。〈Take 1〉マジックというか、2度と出せない感じがある。リラックス感や遊びが多かったり、それはライヴで感じてたムードなんだよね」(NARGO)。

 アルバムの方向性に拍車をかけたのは、一昨年のヨーロッパ・ツアーの影響も大きいとか。

「ヨーロッパでも僕らを知ってる人がいて、これはちゃんとしなきゃいけないと(笑)。スキンズが観にきて喜んでくれたり、歳とっててもDr.マーチン履いてピチピチのジーパンでバッチリ決めてたりさ。筋を通して演らないと、って思いましたね。スカ・バンドとしていろいろやるけど……照れくさい表現ですけど、ルード・ボーイたちが好きなサウンドとして、スカの筋を通す(笑)」(NARGO)。

 さて本作からドラムの茂木欣一も正式メンバーとなり、完全10人編成。バンド内のムードもかなり良い感じ。さらには、バリトン・サックスの谷中敦が作詞に初挑戦と、いま、すごくクリエイティヴな空気に溢れてるという。

「レコーディングもすごくおもしろくてメチャクチャ早いんですよ。あと、谷中さんの作詞っていうのは今回のアルバムのなかでいちばん大きいことかも。すごいですよ、あの量産具合は。1時からリハーサル集合で、3時に演奏したのに、夕飯前には〈歌詞できました!〉って(笑)」(NARGO)。

「暇さえあればケータイで文章打って、迷惑メールをみんなに送ってるからね(笑)」(北原)。

 そんな東京スカパラダイスオーケストラの基本姿勢は、いかにおもしろがるか。まさにそんな楽しい空気感がこのアルバムには詰まっている。

「楽しむにはどうすればいいか、常に考えてます。〈歌もの〉の発想もそういうところからきてるし。重要ですよ。それがなきゃ曲作れないよな~(笑)。僕ら、自分たちがいちばんおもしろくないと気が済まないんです。ライヴでは、お客さんも楽しんでるけどオレらのほうがもっと楽しい!って感じでやってるからね(笑)」(NARGO)

上から、2000年にリリースされた前作『FULL TENSION BEATERS』、2001年にリリースされたライヴ・ベスト・アルバム『Gunslingers』(共にJUSTA/avex trax)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年06月20日 13:00

更新: 2003年02月13日 12:35

文/土屋恵介