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インタビュー

Date Course Pentagon Royal Garden

《ブレイク前夜のイチオシ・アーティスト 002》

「エレクトリック・マイルスの続き」をフロアにぶつけた改革者


 菊地成孔はサックス奏者、アレンジャー、作詞家、文筆家など多才な人物として知られる。ティポグラフィカ、グラウンド・ゼロなどのバンドを経て、 現在、デート・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン、スパンク・ハッピー、東京ザヴィヌルバッハを同時進行。 音楽的にも、アバンギャルドからアイドル・ポップスまで広大な振り幅を誇り、理論家としても有名。

 デート・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン(DCPRG)という、とてつもなく長く大仰な名前のバンドの噂は、ちょっと前から耳にしていた。 コスト削減の世の中の流れに真っ向から逆らうように、11人編成という、いまどき誰もやろうとはしない大消費型のビッグ・バンド・スタイルだという。 それでもって、エレクトリック・マイルスばりの混沌とグルーヴを生み出しているとか。 しかも、クラブに進出して、フロアでは女の子を熱狂的なまでに踊らせてしまっているとも聞いた。

 で、音もまだ聴いてはいない状況で、そのバンド・メンバーを見て、謎は解けるどころか、さらに深まるのだった。 ジャズ畑を中心に名うてのプレイヤーや一癖も二癖もあるミュージシャン、プロデューサー勢ばかりが集まっているではないか。 でも、大変失礼ながらも、このメンツで、女の子を踊らせるグルーヴを生み出しているとは到底、想像が付かなかったのである。

 しかし、ROVOとのスプリット・シングル『Pan American Beef-Steak ArtsFederation/シノ』と、フル・アルバム『Report From Iron Mountain』を聴いてみて、なるほど、と強く納得した次第だ。 名前とか、イメージとかに囚われていた我が身を深く反省しつつ、一見ひねくれたような装いでありながらも、実際はストレートなところを突いたサウンドに感心したのである。

 このバンドのコンセプトを作り上げ、実際にこれだけの大人数の舵取りをして、ライヴではコンダクター的な役割も果たし、録音では編集などもすべてひとりでこなしているのが、リーダーの菊地成孔である。 サックス奏者、プロデューサーとして長いキャリアを誇る彼が、ダンス・ミュージックへの素直なリスペクトとクラブに集う未知の若いリスナーへの期待を口にするのを聞いて、ほんとうにポジティヴな気持ちを与えられたのである。

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2002年06月20日 15:00

更新: 2003年10月29日 15:58

文/原 雅明