syrup16g
ギター・ロックの可能性を広げる、チャレンジングな傑作『coup d'Etat』到着!
昨年、インディーよりリリースされたSyrup16gのファースト・アルバム『COPY』が、ニルヴァーナで言うところの『Never Mind』を彷佛させるものであったとすれば、このたびリリースされたセカンド・アルバム『coup d'Etat』(クーデター)は、まさしく『In Utero』を思わせる、より生々しさを増したギター・ロック。
「それはあるかもしれない。枯渇してるんだけど、最後の振り絞った感じはすごくイイっていうか。やってることはすごい簡単なんだけど、あのメロディーとスリー・ピースの音像がイイですよね。逆ギレっていうか、〈あぁあっ!!〉みたいな(笑)。その肉体性って、意外と『COPY』になかったというか、キレイにコーティングされた部分もあって。『coup d'Etat』は、そのへんをザラザラにした感じ。それは重視したかな」(五十嵐隆、ヴォーカル/ギター:以下同)。
さらに耳を澄ませば、Syrup16gのスリー・ピース・ギター・ロックにはクッキリとした物語性があり、その奥には単に衝動的なものだけではない構築力が息づく。〈ギター・バンド〉のハードルをさらに高くしようと五十嵐はチャレンジを続ける。
「ドラムとギターとベースだけでできることがまだあるっていうか。そこを提示するのがすごい快感なんです。アイデアとメロディーの力だけで持っていくっていうことをやりたい」。
とかくエキセントリックな歌詞にフォーカスされがちな彼らだが、循環コードの上に曲線を描くメロディーの巧みさと意外なアンサンブルのおもしろさには音楽的快感が確かにある。『coup d'Etat』はギター・ロックの可能性がまだまだ拓かれていることを示す。五十嵐の最近のフェイヴァリットを聞けば、Syrup16gがまったく閉じた場所でギターを鳴らしているのではないことがわかるはずだ。
「KICK THE CAN CREWは声を大にして言うけど、好き(笑)。ダサイのも引き受けて情緒的なものも全然ありってところがなんかイイなって。排他的なものってあんまり好きじゃなくて。拓かれたものであるっていう。『coup d'Etat』も、フォーマットは違えど今の時代性みたいなところでいっしょに語られて大丈夫なようにはできてるんじゃないかな?」。