こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

Takagi Masakatsu

映像と音楽を美しく融合させる期待の才能


ひとりの才ある人間に、過剰なまでの期待をするのは間違ったことかもしれないが、電子音楽の洗練の極地とも言えるSILICOMで映像を担当し、美術畑でも高い評価を得る一方、ソロでは音楽/映像を共に手掛ける高木正勝という才能を前にしたとき、この後数年間、彼を中心に新しき音楽が生まれるのだろうと確信せざるを得ない。それだけ彼の映像には、いまだ感じ得なかったリズムが存在するし、その電子音を媒介とした音楽は、特別な風景を映し出す力を内包しているのだから。NYのカーパークから『Opus Pia』、ケルンのトイ・エレクトロニカの牙城、カラオケ・カルクから高校時代の音源をまとめた『Eating』、そして細野晴臣のレーベル、daisyworldからの『JOURNAL FOR PEOPLE』を立て続けにリリースした高木正勝。まだ22歳。

「いま手許にある映像作品の主題は、自然や子供といったものが中心で、一般的に扱いやすくて強度を得やすい対象であることは自覚しています。カメラとコンピュータがあったら誰でもできるんじゃないか……と良く思います(苦笑)。編集作業や作り込んでいく時間も大切だけれど、撮っている時間がいちばんおもしろいです。撮っている間に受けたインスピレーションで音や質感が出来上がりますね」。

SILICOMでのエフェクティヴな映像は、「もはや自分の作品とは思えない」と語る彼。確かに映像に関しては新しき段階に進み始めているようにも思えるが、音楽に関しては、昔からピアノは弾いていたものの、本気で制作し始めてからわずか1年足らずとの話。

「映像に音を付けるというか、以前は音なんてあってもなくても良いんだ、くらい極端になっていました。音に関してはこれからという感じです。(映像と音楽)双方の違いを意識はしていません。付けられるのなら全部の曲に映像を付けようと思っています」。

電子音と生楽器の融合が美しい彼の音楽だが、打ち込みを使用せず、すべて手弾きで楽器/シンセを演奏し、そのオーディオ・ファイルのエディットで楽曲を作っているそう。電子音楽でありながら、人肌の温かみを感じさせるのは、〈演奏家〉としての自分を意識して音に対峙しているからにほかならない。

「本当はピアノをずっと弾いている生活というのが憧れだったんですよ。僕の場合、ピアノの前にいることが、ほかのどの行為よりも自分らしいと感じています」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年07月25日 21:00

更新: 2003年02月10日 15:10

ソース: 『bounce』 234号(2002/7/25)

文/小田 晶房