アメリカに受け入れられたコールドプレイの音楽的要素
〈オアシス、トラヴィスが築いてくれた道標に従って俺たちも続け!〉とばかりにアメリカ進出を試したら、あっさりブレイクを果たしていたコールドプレイ。最初の米国ツアーこそアイルランドのJJ72を率いていたものの、その後はカリフォルニア産オルタナティヴ・ロックのグランダディーとツアーをやったり、ニューヨークのシンガー・ソングライター、ジョセフ・アーサーを起用してみたりと、アメリカのアーティストとの共演にも積極的なのは英国アーティストのなかにあっては異色ともいえる動きだろう。アメリカではジェフ・バックリーやダンカン・シーク、ベン・フォールズなど、バンドものよりもシンガー・ソングライターと比較されることの多い彼ららしく、ライヴでは〈現代カントリー・ミュージックの父〉と呼ばれるハンク・ウィリアムスの“Lost Highway”をカヴァーしてみせるなど、やはりそっち方面の志向を窺わせる。またフィラデルフィアのショウでは、ブルース・スプリングスティーンの“Streets Of Philadelphia”をその街にちなんでカヴァーするなど、臨機応変なフットワークの軽さも見逃せない。アメリカン・ロックの王道といった印象のスプリングスティーンも本質的にはシンガー・ソングライターってことを思えば、なんとなく赤い糸が見えてくる。さらにクリス・マーティンはカナダが誇るシンガー・ソングライター、ロン・セクススミスの最新作にもゲスト参加しているようだし、目先の成功に左右されないこだわりは、彼らの体力を強化しているファクターといえそうだ。
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2002年09月05日 15:00
更新: 2003年02月13日 12:11
ソース: 『bounce』 235号(2002/8/25)
文/村上 ひさし