麻波25
ありとあらゆる〈うれしい〉が詰め込まれた、おもちゃ箱のようなアルバム『MUSIC BOX』
やったじゃん、麻波25! と素直に言える。なんだかんだ、デビューのころからこのバンドを見てきたけれど、いまの状況はもちろん過去最高だ。ポップすぎない?なんて揶揄する声もあるんだろうけど、もともとポップな素質はたっぷり持ってたんだから、麻波25は。最新作『MUSIC BOX』での痛快な音楽馬鹿っぷりをちゃんと見てほしい。
「たとえば映画のサントラになっても、(『MUSIC BOX』には)いろんな場面に対応できる曲があると思うんですよ。夏もあるし、雨もあるし、“TREASURE OF LIFE”はベッドシーンでもイケるし、そこで結ばれたんだけどやっぱり別れちゃうのが“いつかの浜辺で”とか。で、エンド・ロールで“ミドリノホシ”。北野武さんどうですか?みたいなね(笑)」(PASSER、MC)。
『MUSIC BOX』は、麻波25の持つ多彩な音楽性をめいっぱい詰め込んだジュークボックスのようであり、おもちゃ箱だ。全員が曲作りに参加して、しかも個性がハッキリ分かれているという極端なバランスも実に楽しい。
「麻波25がもともと持ってたラウド感にこだわった部分が5割として……ボクは単純にナマ楽器の音が好きなんですよ。録るときの音がよくないと曲自体がダメになっちゃうから、自分の及第点を超えるためにギリギリまで時間をかけました」(YUICHI、ドラムス)。
「ボクの曲では、アヤシイ雰囲気を出したかったですね。ブッ飛んだ感じで、でもちゃんと日本語でラップが乗ってる。スモーキーな感じを出したかった」(SHAKAN' BASS、ベース)。
「麻波25の中で、どポップなもの、ポップスと言っちゃってもいいようなものってなかったんで、そういうのが1曲あってもいいかなと。普遍的なポップ性、ビートルズからあるようなものを意識して作りました」(TOMO、ギター)。
「リリックはどの曲でもテーマが明快だったし、そのときの自分が出てる。自信たっぷりなときも不安なときもあるし、そのときどきによっての考え方をそのまんま書いただけ」(HUNTER、MC)。
大ヒット曲“SONS OF THE SUN”のラテン・テイストをはじめ、レゲエ~ダンスホール、R&B、ヘヴィー・ロックなど、1曲ごとはバラバラなのに不思議な統一感があるのは、PASSERいわく「フック(サビ)のキャッチーさと気持ちよさ」だ。ココまでやっちゃっていいんだ、と思わずニコニコしてしまう最新シングル“A HAPPY DAY”の屈託のない明るいフックを口ずさみながら、麻波25は自分で自分のセンスを解き放つ自信を持ったんだなと強く感じる。
「やっぱりフックがあってのその曲だし、いちばん曲を強調するところだから。それが、今回のアルバムのいちばんいいところだよね。たとえば“SONS OF THE SUN”も、完成するまでにすごい何回も書き直してて、YUICHIくんとかに何回も聴かせて〈どう?〉って。すげえ苦労して、そこでつかんだフックをこのアルバム全部に入れたから。“SONS OF THE SUN”ですげえ苦労したぶん、あとはサラッといけた。〈ココ気持ちいいでしょ?〉〈オッケー、オッケー!〉って感じ。人のためだけじゃなくて、そこはオレも気持ちいい場所だったからね」(PASSER)。
やったじゃん、麻波25! これからは、なんでもアリの深くて広いポップ・ソングのフィールドで、彼らは待っている。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2002年10月31日 11:00
更新: 2003年03月10日 11:54
ソース: 『bounce』 237号(2002/10/25)
文/宮本 英夫