インタビュー

きっかけはいろいろ、〈ラウド〉を旗印にしてきたバンドたちの眼前に切り拓かれた新しい風景

ロックは常に形を変えるし、その変化の歴史を踏まえて進化することを求められがちな音楽であるが、しかし、進化が目的化した瞬間、それが不自然で魅力に欠けたものに陥った事例も数知れない。

RIZEは今作において――そのアルバム・タイトル『Natural Vibes』が表しているように――佇まいは自然なまま、その世界観はラウドなだけではないベクトルへも広がっている。どうやらその要因は、レコーディング前にJesseが、NY~ジャマイカ~LAと巡った旅にあるようだ。それはかつてWRENCHがヴォーカル、SHIGEのレイヴ体験をきっかけに新境地を拓き始め、さらに米テキサスで行われたライヴ・イヴェント〈S×SW〉などでの経験を糧に、ひとところに収まりきらないスケールのアルバム『Clinic of "SATANIC"』(2001年)を作り上げるまでの経緯を思い出させる。では、〈旅〉というものだけが変化を引き出したのかと言えば、話はそう簡単ではない。

先ごろリリースされた麻波25のアルバム『MUSIC BOX』やYKZのシングル“RIGHT HERE”は、押しまくるだけでなく引いてもみることで、時に穏やかだったり風通しが良かったりもするし、そんな作風に至ったバンドの好例だ。しかし、それは旅云々というより、それまでドープであったりハードであったからこそ闇雲に深く埋没するような作業を離れ、ふと見晴らしの良い風景に立ってみたいという衝動がそうさせたのではないか、とも思われる。

こういったバンドたちを見ていくと、彼らの前には壮大なランドスケープや心象風景があり、その風景に向かって音が紡ぎ出されているという、理想的な結果としての進化の姿がある。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年12月05日 12:00

更新: 2003年02月07日 15:07

ソース: 『bounce』 238号(2002/11/25)

文/小野田 雄

関連リンク

記事ナビ