インタビュー

Madonna

ついにマドンナが動き出した!! 世界中が不安と混乱に包まれるいま、ニュー・アルバム『American Life』を介して彼女が語るストーリー……それは〈革命〉だ!!

価値観への革命


チェ・ゲバラをイメージして作ったという『American Life』のジャケットは、マドンナがこの新作に込めた革命への意志を、そのまま代弁しているかのようだ。

「世の中は変わる必要があるわ。真面目にね。それで革命を思わせるアイコンを探していたの。その点、ゲバラの肖像は有名でしょ」。

20年間もポップ界の頂点に君臨し続けるクイーンは、ゆったりとそう話す。言うまでもなくマドンナのキャリアは、〈20世紀音楽〉の歴史そのものだ。それはつまり、先鋭的なサウンドやモチーフを敏感な嗅覚と才能によって表現に盛り込むことで、〈音楽シーン〉を仰天させひっくり返し続けた事実のこと。当然、女性性や宗教、家族などのタブーをポピュラー・ミュージックという〈みんなの音楽〉であるフィールドで展開してみせた革命の歴史でもあり、セルフ・プロデュースとマーケティングに関する天才的な能力をミュージシャンも持ちうるということを、世界に見せてきた軌跡、すべてのことでもある。

最新作『American Life』はおそらく、そんな彼女が生み出してきた過去のどの作品よりもはっきりと、100年後の音楽シーンで語られる作品になると私は思う。ただ、〈マドンナのセルフ・プロデュースの現在〉を見たかった人は、このアルバムを聴くにあたってまず、その認識を改めなければならないことを書いておこう。このアルバムが響かせるマドンナの〈革命の意志〉は、ポーズでも単なるモチーフでもない。注目を集めるための仕掛けでも、ない。

マドンナは本気だ。本気で全キャリアの軌跡をひっくり返さんばかりの勢いで(いや実際、このアルバムの冒頭2曲“American Life”“Hollywood”の歌詞に耳を凝らせば、彼女がすでに〈ひっくり返している〉ことがわかる)、アルバムを通して問いかける。〈幸福な人生って、何?〉と。物質的な成功を求めてきたアメリカ人は、果たして本当の幸せを手にしたのか、と。このメッセージはある意味で、マイケル・ムーアのアカデミー授賞式での爆弾発言よりも、シビアで辛辣だ。

「かつて私は、アメリカン・ドリームをこんなふうに思っていたのよ……ちっぽけな田舎町から無名のままNYに、わずか35ドルを握りしめて出てくるの。〈有名になってみせる。可能性は無限大よ〉という心意気だけ携えて。私がまさにそうだったわ。実際、世界中を旅してみると、他の国の人々に比べて、私たちアメリカ人は恵まれていると実感するわ。それは確かにありがたい。でも同時に、私たちアメリカ人が間違った価値観に取りつかれているという気もするのよ」。

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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年05月01日 16:00

更新: 2003年05月15日 18:52

ソース: 『bounce』 242号(2003/4/25)

文/妹沢 奈美