インタビュー

太陽族(3)

〈あっ!〉ていう瞬間

 そうだ、太陽族を知るためにはライヴを先に観てしまったほうが良いのかもしれないといま思った。照れ屋の花男は、オーディエンスに名前を呼ばれたりするとつい「このバカ!」とか応えてしまい、あとで反省することも多々あるという可愛い男である。「〈バカ!〉は褒め言葉なんですよー」(花男)と言うのはきっと本当で、世界のなかのありふれた小さな出来事が、彼の繊細な感受性に触れてピクンと反応するおもしろさ。それを〈太陽族的な〉ものの見方、と言ってもいいのかもしれない。

「歌ってる最中とか、〈コンバンワ、太陽族です!〉って言ったときのあのゾワゾワっていう感じは、ステージの上でしか感じられないんですね。ライヴは……たとえば、子供が風船を持ってて、子供の手から離れて飛んで言っちゃったときの〈あっ!〉ていう瞬間とか。あと、オレの友達の話なんですけど、道を歩いてたときに、障害者の人に話しかけられたそうなんですね。なんだろう?と思ったらしいんだけど、その人が〈あなたの爪をずっと見てました。あなたの爪はとても素敵ですね〉って言ったんだって。それを聞いたときに〈あっ!〉と思った。オレ、そういう話を聞くと〈あっ!〉てなるんですよ。そういう瞬間がライヴにはあるから。楽しいですよ」(花男)。

 太陽族の歌詞にはタネも仕掛けもなく、耳に入るそのまんまの姿でそこにある。“さよなら最悪な日々”と言ったらそのままの意味だし、“手をつなごう”もそうだし、“キミだけには”も〈キミだけには〉である。花男的にはもっといろんな表現をしたいらしいが、それは難しい比喩を使いたいというわけではなく、その瞬間の感情により近い表現を見つけたい、ということなのである。「まだ始まったばかり」と花男が言うのは、まだまだやりたいことがどんどん沸いてきている、という〈ワクワク感〉が言わせるのだろう。

「夜通しずっと遊んでて、朝になって朝日が昇ったときに、〈ああ、朝が来ちゃったね、かったるいね〉っていう表現の仕方とか、〈さっきまで遊んでた花火の匂いと、太陽の光に吐き気がするね〉っていう表現の仕方とか、いろいろあると思うんですよ。その表現の仕方によって、ドキドキする表現をたくさんしていきたいなと思ってるんですけど、なにせ言葉を知らないというのがあって(笑)。でも、それが逆に良いところでもあると思う。背伸びしてないから。今回は、いままでよりもっと〈言葉の表現〉ということを考えました」(花男)。

 最後にひとつ。太陽族にとって〈成功〉とは?と訊いてみたのだが……いかにも花男らしい答えが帰ってきて、つい笑ってしまった。

「いちばんいいのは、太陽族がバーッと出て、いつか終わって、おじいちゃんになったころにみんなが集まって、そのころの映像とか雑誌を見ながらみんなでゲラゲラ笑ったりして。〈ハハハハ、なんだよコレ!〉とか、将来笑い合えるような活動をしていったらおもしろいなあと思う。こういう形になりますように、とかはとくにないんですけど。楽しく長くやっていけたらいいなと思ってます」(花男)。

 太陽族は太陽族で、ほかの誰にも似ていないということがみなさんにわかってもらえたら、このインタヴューをした甲斐があったと思う。

▼2002年にリリースされた太陽族のミニ・アルバムを紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年05月01日 17:00

更新: 2003年05月29日 17:39

ソース: 『bounce』 242号(2003/4/25)

文/宮本 英夫