インタビュー

レディオヘッド第6のメンバー、ナイジェル・ゴッドリッチ

 新作『Hail To The Thief』でプロデュースを担当したナイジェル・ゴッドリッチにとって、レディオヘッドとの出会いがかなり早い時期だったことが、彼のプロデューサー/エンジニアとしての方向性を大きく決定づけた。90年にスクール・オブ・オーディオ・エンジニアリングを卒業後、XTCやストーン・ローゼズでお馴染みのジョン・レッキーのアシスタントとして、ライドの94年作『Carnival Of Light』にエンジニアで参加。翌年には早くもレディオヘッドのセカンド・アルバム『The Bends』のエンジニアを担当し、以降は正式プロデューサーとしてレディオヘッドにとって欠かせない存在になっているばかりか、敏腕として急激にトップ級の売れっ子になったことは周知の事実であろう。

 エンジニアリングの知識があり、音の加工に録音そのもの以上の時間を割く彼の手法は、クラブ・ミュージックとの境が曖昧になってきた90年代以降のロック・シーンのなかで間違いなく大きな武器となっている。音の輪郭をオブスキュアにし、まるで手に取ったときの感触までが伝わってくるようなその生々しい処理の仕方は、ベックやペイヴメントのそれまでの作品との違いを見るまでもなく明白だ。逆にいえば音の処理に個性があるため、楽曲そのものに強力なパーソナリティーがないと単なる音響に留まってしまう恐れもある。それだけに、ニール・フィンやジェイソン・フォークナーのようなポップ職人や、トラヴィスやストロークス(現在、新作を手掛けている)のようなダイナミズムを持つバンドとの仕事を選んできた彼の冷静な判断力もまた勝因の一つなのかもしれない。

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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年06月05日 11:00

更新: 2003年06月26日 19:42

ソース: 『bounce』 243号(2003/5/25)

文/岡村 詩野

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