インタビュー

Norah Jones

世界中が恋に落ちたデビュー作から約2年、ノラ・ジョーンズが次の一歩を踏み出した。より自由に羽ばたきはじめた彼女の新作『Feels Like Home』が到着!!

ドリー(・パートン)は本当に素晴らしいわ


 いまアメリカで一番売れているCDはアウトキャストの2枚組アルバム『Speakerboxxx/The Love Below』。そのうち、アンドレ3000盤〈The Love Below〉のほうに、昨年アメリカで一番売れたノラ・ジョーンズが参加している。ヒップホップの範疇からどんどんはみ出していくアウトキャストと、ジャズの範疇からどんどんはみ出していくノラ・ジョーンズ。新時代を担っているのは、彼らのような〈捉われまい、収まるまい〉という意志を持った自由なアーティストたちなのだなぁと強く思うと同時に、両者のコラボレーションをおもしろく感じた僕だった。

「あれはクールだったわ。ある日突然アンドレから連絡があったの。彼らの音楽のことは多少は知っていたけど、彼個人のことは知らなくて。でも、楽しそうだなって思ってね。実際、アンドレはとてもユーモアのセンスがある人だった。彼らはいい音楽をやっているから、今のように成功しているところを見るのは、すごく嬉しいわね」。

 普段、ヒップホップも聴くんですか?

「正直、そんなには聴かないわね。アウトキャストにルーツ、トライブ・コールド・クエストなど好きなのもあるけど、日常的に聴いてるってわけではないの」。

 このあたり、もっと突っ込んで訊いてみたかったのだが、与えられたインタヴュー時間は25分のみ。なので、新作『Feels Like Home』の話に移る。

 まずこのアルバム、世界で1,800万枚ものセールスを記録したデビュー作『Come Away With Me』から世界観や音の感触に関しては、そう変わってはいない。レコーディングの途中にも全54か所の北米ツアーを行うなど、この2年間、実に意欲的にツアーをやっていただけあって、バンド・メンバー(=レコーディング・メンバー)とはさすがに息が合い、ライヴのダイナミクスが音に反映されている。奇をてらったこともまったくしていないので、前作を気に入っていた人がそのまま好きになるだろう作りだ。とはいえ曲の幅は広がった。顕著なのは、カントリーやブルースなど、前作以上にアメリカのルーツ・ミュージックに根差したアプローチの曲が増えている点。ジャズだなぁと思えるのは、デューク・エリントンのピアノ・インストゥルメンタル“Melancolia”にノラが歌詞をつけた“Don't Miss You At All”ぐらいか。

「特に、これこれこういうアルバムにしたいというイメージはなかったの。ただ、できるだけいい曲を選んで、そのベストのテイクをアルバムに入れたいと思っていただけ」。

 ノラはそう欲がないように言うのだが、ドリー・パートンを迎えて楽しそうに歌っているブルーグラス調の“Creepin' In”などは、けっこう思い切った試みなのではないだろうか。彼女の参加はどのように決まったのか。

「ナッシュヴィルで行われた〈カントリー・ミュージック・アワード〉で、初めてドリーといっしょに歌ったの。その時にとてもよくしていただいて。で、“Creepin' In”の話だけど、この曲はアルバムのどの曲ともタイプが違いすぎるから、最初は収録するつもりがなかったのね。でも、夏のツアーでプレイしている間に、すっかり気に入っちゃって。で、ドリーに歌ってもらったらどうかな?って思いついて、頼んでみたら快く引き受けてくれたわけ。私もバンドのみんなも、彼女がスタジオに来た時は緊張してたわ。彼女はスタジオに長くいられないということだったので、なるべく早くいいテイクを録らなきゃって思って。でも、それが功を奏してファースト・テイクでいいものになったの。ドリーは本当に素晴らしいわ」。

▼ノラ・ジョーンズの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年02月26日 18:00

更新: 2004年03月04日 16:12

ソース: 『bounce』 251号(2004/2/25)

文/内本 順一

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