Norah Jones(2)
テキサスが恋しくなったのかな(笑)
この曲の他にも、タウンズ・ヴァン・ザントの“Be Here To Love Me”をカヴァーしたり、トム・ウェイツとキャサリン・ブレナンの“Long Way Home”をそれ風のアレンジでカヴァーしたり。また、最近ではドリー・パートンのトリビュート盤『Just Because I'm A Woman -Songs Of Dolly Parton』とパッツィ・クラインのトリビュート盤『Remembering Patsy Cline』に参加するなど、ノラは何かとカントリー好きであることを表に出している。
「私はテキサスで育ったから、カントリーを聴かないわけにはいかなかったの。ある時期、しばらくはなるべく聴かないようにしていたんだけど、でも育った地の音楽ということもあって、結局戻っちゃった。そもそも私の祖父母がオクラホマ出身で、祖父母の家に行けば、ずっとカントリーがかかっていたから、そこから始まってるのね。で、ハイスクール時代には、ハンク・ウィリアムス、ジョニー・キャッシュ、パッツィ・クライン、ドリー・パートン、それにウィリー・ネルソンもよく聴いたわ。最近ではバンドのメンバー全員がカントリーに夢中なの。前作よりもカントリー調の曲が多いのは、そういうこと。好きで聴いている音楽は、どうしたって自分の作品にも反映されるものだから」。
今作には元ザ・バンドのレヴォン・ヘルムとガース・ハドソンも参加しているのだが、しかし、大都会NYに移り住んでしばらく経った今になって、なおさらこのようにレイドバックした方向にいくというのはなぜなのだろうか。
「そうねぇ、確かにNYに移ってからのほうがテキサスで育った自分の面により同調するようになったみたい。テキサスが恋しくなったのかな(笑)。テキサスにいた頃には当たり前のようにカントリーなどが流れていたから、意識的に捉えていなかったのかもしれない。なんだか変よね」。
とまあ、今作のバック・トゥ・ルーツ的な側面をやや強調した文になっているが、ちょっと物憂げで漂うようなノラ流ポップスもちゃんと収録されているので、“Don't Know Why”にやられて好きになった人も構えることはない。奥は深いけど聴きやすい。聴きやすいけど奥が深い。これはそういうアルバムだから。っていうところで、これに通じるところもある作品として思い浮かぶのが、リッキー・リー・ジョーンズの最新作『Evening Of My Best Day』。ただ、リッキー・リー作品にあったような痛烈なメッセージは、ノラの作品にはない。というわけで最後の質問。近い将来、あなたがメッセージ性の強い曲を歌うということは考えられますか?
「少なくとも今すぐにはないわね。もちろんメッセージ性の強い曲が必要とされている時代だとは思う。60年代に書かれたメッセージ・ソングがどれほどその時代に重要な役割を果たしたかもわかっているつもり。私も何らかの強い衝動に突き動かされたら、それを曲にしようとするかもしれないけど。でも、今に関しては私は音楽を楽しみたいだけだし、私の曲を聴いていい気分になってもらえればそれがいちばん嬉しいの」。
この感じ。まさにノラ・ジョーンズ。
▼ノラ・ジョーンズの参加作品を一部紹介。