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インタビュー

Knoc-Turn'Al


 US西海岸から久々に現れた大型新人、ノクターナル。本人も「オレが〈西海岸の新しい音〉をレペゼンしている自負はあるね。将来に向けて西海岸を背負って、団結していきたいと思ってるぜ」と自信満々だ。語りと歌とラップの間を口ごもりながら行き来するフロウは、ちょっとありえないぐらいにレイドバックしており、ヘロヘロあるいはユルユルでモクモクで……何でもいいが、そういうふうに形容できるもので、もうオリジナルとしか言いようがない。

「型破りでオフビートなラップだろ。他のアーティストとはまったく違うと自負しているね。現在のスタイルをクリエイトするまでにかなり時間をかけたね。他人とは違うやり方をずっと模索していたからさ」。

 ノクターナルはまったくの新人ではなく、ここ数年ずっと待ち望まれ続けていた期待のニューカマーである。彼は現在28歳。ロングビーチ東部の出身、つまりスヌープ・ドッグやウォーレンGらとは同郷で、実際に「ウォーレンもトゥインズもみんな昔からの仲間なんだ」とのこと。父親がバンドのヴォーカリストだったこともあって早くからアーティストになることを夢見ていた彼は、アイス・キューブやビッグ・ダディ・ケインらに憧れ、高校で開催されたタレント・ショウにて初めてマイクを握ったそうだ。そして、デヴィッド・マナフィールドなる人物がLAで立ち上げた新進レーベル=LAコンフィデンシャルとの出会いがノクターナルを表舞台へと誘ってゆく。

「デヴィッドと出会った時に〈これまで何十人ものラッパーたちと会ったけど、誰も契約できるヤツはいなかった。でもお前は違う。オレと組んだらドレーと仕事ができるぞ〉って言われてね。それがすべての始まりさ。デヴィッドと契約した98年の末に彼がドレーを紹介してくれたんだ」。

 スヌープやエミネム、イグジビットら強豪がひしめくドレーの歴史的名盤『2001』にて特異なラップを披露、大いに注目を集めた彼は、ドレーと組んだ“Bad Intensions”、そして“The Knoc”のヒットを経由して2002年にアルバム『Knoc's Landin'』を完成させた。結果的に同作は音源流出によってお蔵入りしてしまうのだが……。

「残念だったけど、自分の作品を新たに固めることのほうが大事だと思った。西海岸の新人でメジャーから出せてるのはオレだけだから、ちゃんとしたモノを出したかったんだよ。今回はいまのところブートも出回ってないから万全さ(苦笑)」。

 そうして生まれた『The Way I Am』はメジャー・シーンを意識した全国区対応サウンドでありつつ、西海岸クラシックの曲名やフレーズを次々に引用して「西海岸の先人たちに捧げた」という“Peepin' Tom”のように出自を確かに窺わせるフレイヴァーも濃厚に立ちこめている。ただ、普通じゃないのはやはり、ノクターナルのズバ抜けて個性的な語り口だ。

「タイトルどおり、〈オレ流〉を世界中に紹介する内容さ。とにかく他のアーティストとは違う音を作ることを心掛けて、オリジナリティー溢れる、他では聴けない作品に仕上がったと思うよ。それぞれのプロデューサーが求めている音が違うのはおもしろかったし、クリエイティヴで多様性に富んだ作品だぜ」。

 彼自身が選んだというプロデュース陣には、ドレーやDJクイック、ウォーレンG、ティンバランド、ダミザなど錚々たる面々に加え、LAコンフィデンシャルの無名プロデューサーたちも名を連ねている。なお、クルーにはすでに知名度のあるスリップ・カポーンやタイム・ボム、ヤイクスらがウズウズ控えているが、ノクターナルは悠然とレイドバックして、こう言ってのける。

「クルーのアルバムも将来的には作ると思うけど、いまはとにかくこのアルバムに集中したい。ドッグ・パウンドだってスヌープのアルバムをきちんと出してから動きだしただろ? それに、オレの野望は10年後に〈伝説〉となることなんだからさ」。

 その言葉がただのビッグマウスかそうでないのか、煙吐くロングビーチの新星が間もなく答えを出してくれるだろう。

PROFILE

ノクターナル
75年、ロングビーチ出身。NWAなどをきっかけにヒップホップに親しみ、高校生の頃にはマイクを握っていた。デモ制作などに励み、98年にLAコンフィデンシャルと契約。99年にドクター・ドレーの『2001』にフィーチャーされて注目を集める。2002年のシングル“The Knoc”がチャート1位を記録し、アルバムも完成させるが、リリース目前に音源が流出したため発売中止に。その後はミニ・アルバム『LA Confidential Presents Knoc-Turn'al』をリリースし、シェイド・シャイストやウェストサイド・コネクションらの楽曲でも客演を繰り広げた。4月7日にファースト・フル・アルバム『The Way I Am』(LA Confidential/Elektra/ワーナー)がリリースされる予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年04月08日 14:00

更新: 2004年04月08日 17:59

ソース: 『bounce』 252号(2004/3/25)

文/出嶌 孝次