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インタビュー

flex life

和風情緒溢れる前作『黒い秘密』より約1年。flex lifeが、〈の~らりくらり♪〉とはじめたセッションが生んだ新作『japonica』の中身とは……?


 flex lifeというバンドには、オーガニック、そしてフリーフォームという表現がよく似合う。フレキシブルなサウンド・アプローチを繰り広げてきた彼らがmama! milkやLoop Junktionといった辣腕たちを迎え、東京と大阪を股にかけて制作したニュー・アルバム『japonica』は、そんな彼らの姿勢がくっきりと現れたアルバムだ。

「昨年、シングルの“amefri-ca”を大阪でレコーディングして、そこから私たちすごく変わりました(笑)」(青木里枝、ヴォーカル)。

「前作『黒い秘密』は打ち込みを多用したので、今回はもうちょっとライヴ感とか生っぽいことをやりたいっていうのはあって。里枝ちゃんがいちばん変わったんじゃないですかね? 大阪効果(笑)」(大倉健、ベース/ギター/キーボードほか)と2人は語る。

「前作は、習字でいったら〈ちゃんと半紙の中に収まる字〉っていう感じがしたんですよ。今回はもっとはみだした部分も含めて良し、みたいな」(青木)。

 昨年からの活発なライヴ活動からフィードバックされ、多分にステージでのパフォーマンスを意識して制作されたという新作は、研ぎ澄まされた緊張感に代わり、大阪のスタジオの自由な雰囲気も相まって彼らの開放的な一面が顔を覗かせる。

「大阪では、空気感とかその場のノリを重要視していて、初心に返ったような感じがしましたよ。70年代の音源でも、はみ出ちゃったりとか、すごい変な音入っちゃってるよとか、そういう過剰な部分が人間臭くておもしろいなぁと思っていたりするのに、自分のをやるときには整えすぎちゃっていたかなと。もうちょっとデフォルメした形で曲全体を作ったり、違和感を排除するんじゃなくて、むしろ違和感があったら〈やった!〉みたいな感じでいきたいなと思ったから」(青木)。

 アルバムの中での東西対決は、彼らにとっても楽しい体験だったようだ。肉体的な感覚への回帰が、リズムの揺れやその場の空気を生かしたアレンジメントに結実。それにより、抜群のピッチやフロウを持っていた青木の歌唱や、映像的な詞の世界にも変化が現れてきている。

「『黒い秘密』がちょっと内向的で精神的な部分が大きかったと思うし。今回はレコーディングで音を出しているなかで詞を書いたりすることが多かったので、より肉体的というか、歌詞も含めてフィジカルな感じは自分でもしますね」(青木)。

〈融合〉をテーマに、相反するベクトルの要素が混然となった、振れ幅の大きいこのアルバム。なかでも白眉となる、ガムランやサン・ラーなどのフリージャズの要素が色濃い“cosmic chant”なども、レコーディング現場でのセッションにより形作られていったという。

「いままでで瞬発力がいちばんあったよね。録音でそれを取り戻せたというのは大きいし。もし今回の到達点があるとすれば、自分たちが信頼したアーティストが集結したので、その場で出した音=OKだった。そういう意味でジャズの感覚に近い」(大倉)。

「ルーツやコモンとか、わりとヒップホップだと思っていた人が、ロックなアプローチをしたり。N.E.R.D.とかアウトキャストとかも、えー!?っていうようなことをやっていて、もともと私たちもソウルだけをやっているバンドでもないので、なんかシンパシーを覚えるというか」(青木)。

 彼らのライヴでの代表的なレパートリーである“らいふらいさん”“あり*なし”のリアレンジも収められており、今作はある意味flex lifeの集大成としての聴き方も楽しめるだろう。ソウル・ミュージックの熱気や抑制を、頭でっかちでなく〈日本種=japonica〉として表現できる稀有な存在であることを、そしてflex lifeというバンドの正体を改めて表明した作品である。重ねて彼女の言葉を借りれば、こんな感じだろうか。

「mama!milkとLoop Junktionをいっしょにフィーチャーしたくなっちゃう。それがflex lifeっぽさかな」(青木)。

▼flex lifeの作品を紹介。

▼『japonica』に参加したアーティストの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年04月28日 13:00

更新: 2004年04月28日 20:02

ソース: 『bounce』 253号(2004/4/25)

文/駒井 憲嗣

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