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インタビュー

Two Lone Swordsmen

このバンド、どこの誰? ヴォーカリストの名前は……アンドリュー・ウェザオール!? 深い闇の底から這い出してきた双頭の電子竜はサイコ・パンク・エレクトロニック・ロックンロール(?)の魔神に進化を遂げていたのだ!!

だったら、他のことをやればいい


 アンドリュー・ウェザオールは、クラブ黎明期の80年代後半から最前線で活躍してきたUKを代表するDJであり、かつてはロックにアシッド・ハウスのクラブ耳を持ち込み、プライマル・スクリームをブレイクさせたことはあまりにも有名です。一方でアンダーグラウンドに一貫してこだわり続け、自身ではセイバーズ・オブ・パラダイスを経て、95年からはキース・テニスウッドとのトゥー・ローン・スウォーズメンとして活動してきました。彼は以前僕にこんな話をしてくれたことがあります。あ、もちろんある雑誌の取材で。

「クラブっていうのはいままで聴いたことのないような音楽がかかる場であるべきだと思う。ダンスフロアで客がお互いの顔を見ながら〈この音楽は一体なんなんだ!〉って大騒ぎするようなね。そういうとこじゃなきゃワクワクしないだろ。俺がDJしていて気持ちいい瞬間っていうのも、クラブで半分の客を興奮させつつ、残り半分を引かせているときなんだ(笑)。客全員に〈まあまあいいじゃん〉とか言われたりするのは最悪だよ」。

 クラブ嫌いなみなさん、べつに現場至上主義を掲げているわけじゃないと思うんでご安心を。まあ雑誌でもレコ屋でも、音楽が一種の符牒や合い言葉として流通するようになっちゃったらつまらないですよね。では発言の続きをどうぞ。

「そもそも俺の名前が知られるようになったのも、明け方にスロッビング・グリッスルとかダブをプレイするヤバいDJがいるって騒がれるようになったからなんだ」。

 アシッド・ハウス爆発期から、朝方アホなヤツばかりが残っているクラブでウェザオールがターンテーブルに載せ続けてきたぶっ飛んだボム──『Nine O'Clock Drop』。カラーボックスや400ブロウズ、ジーナ・Xや23スキドゥーなどのポスト・パンクを彼がセレクト/DJミックスしたこの編集盤は2000年にリリースされています。その2年後にラプチャーの“House Of Jealous Lovers”がヒット、いまはニューウェイヴの12インチをDJたちが探しまくったり、『Nine O'Clock Drop』に収録されているような音楽をやってみたりという時代になっちゃいました。

「メインストリーム? その言葉にはイライラするね。みんなが真似するとメインストリームになるっていうだけの話だろ。でも俺がやっていたことがあとでメインストリームになって、その時点でそれをやった人たちのほうが俺より儲けて有名になったなんていう話は今までに何度もあったよ。いや、もちろんDFAやアウトプット、タイガースシは好きだよ。ただ自分がやってきたことがメインストリームになってしまったら、俺は他のことをやればいいと思っている。それでおもしろいことをやっていける十分な知識と興味とクリエイティヴィティーを持っているし。ただ79年には日陰者だったイギリスのレコードが、25年経って世界中に影響を与えているとしたら、本当にうれしいことだよね」。


アンドリュー・ウェザオールが2000年にリリースしたミックスCD『Nine O'Clock Drop』(Nuphonic)。現在は廃盤につきご了承ください!!

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年06月17日 14:00

更新: 2004年06月24日 19:18

ソース: 『bounce』 254号(2004/5/25)

文/丹羽 哲也