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インタビュー

SPARTA LOCALS

バンド・グルーヴをよりストレートに出し切った快作『SUN SUN SUN』。 1年ぶりに届けられた渾身の一撃は、太陽をも踊らせるロック・アルバムだ!


 ストレートを投げてるつもりで、気付いたら変化球を投げていた凸凹バンドが9回表2死満塁の崖っぷちで、すべてを捨てて投じた一球。その球は、〈巨人の星〉ばりに回転して土埃を巻き上げながら、低く真っ直ぐに飛ぶと、そのままキャッチャー・ミットへ。しかも、そのキャッチャーは捕った瞬間、5メートルくらい後ろに引きずられちゃったりして……。

 そんなド真ん中の剛速球でピンチを最大のチャンスに変えたのが、SPARTA LOCALSのサード・アルバム『SUN SUN SUN』だ。

「今までの作品は自分の中ではもう一歩だったですけど、このアルバムは……はっきり言っちゃうと、自信作なんですよ(笑)。ようやく、スタートに立てたなと思います」。

 そう語るのはソングライター兼ヴォーカル/ギターの安部コウセイ(発言:以下同)。彼の言葉からは、散々、悩み考えていたことがふとしたきっかけで、オール・クリアになったような、そんな晴れやかさが溢れ出して止まらない。

「どこかに変なプライドであったり、何も生まない苛立ち……要するにそういう弱い部分があって、余裕をなくしてたんだろうな、と。レコーディングでは作っている作品の全体像を遠くから見る視点が必要なのはわかってたんですけど、それができなかったんですね。全体像が把握できていれば、細かい部分を気にせず、ノリというかグルーヴ一発でドカーンとできていたと思うんですけど、難しく考えすぎてしまった。もちろん、誰かのグルーヴを物真似することはできるんですよ。でも、それはイヤだったから、自分たちのノリを追求していたんですけど、そんな生やさしいものではなくて……でも、演奏に臨む時の前向きなエネルギー、つまり演奏を心底楽しみ、感動し、興奮することがノリを出す部分において一つのカギだとわかって、ようやく、グルーヴっていう部分で今回はその端っこを掴まえることができた」。

 グルーヴ指向ではあったものの、緻密に考えすぎた結果、ニューウェイヴ的とも評される屈折した作風を図らずも展開していた彼らだが、本作ではまったく練習をせず、南石聡巳と内田直之という最良のエンジニアのもと、録音の最中にいちばん上手くなったところを音源に封じ込めるという方法を選択。その結果、彼らは荒削りにして、反復的かつ直線的なバンド・グルーヴを得たわけだが、音楽は、そんな簡単なことこそが実は難しかったりする。

「言葉に関しても、昔はその一語一語の強さに恐れをなして、〈ここでメロディーが跳ねるから~〉とか〈濁音が~〉とか、そういう部分をものすごく計算して作ってたんですよ。でも、そんなことやってても楽しくねぇし、書けんなぁ、と。だから、今回はあんまり考えず、思いっきり出しましたね。もちろん、言いたいことの山は持ってくるんですけど、そこさえあれば、後は鼻歌の延長の歌詞でいいんじゃないかなって。やっぱり鼻歌がいちばん強いと思うんですよ」。

〈おどろーぜ おどろーぜ〉と呼びかけるシングル“トーキョウバレリーナ”ほか、積極的に聴き手を踊りに誘う歌詞が散見される本作はもしかすると、〈ニューウェイヴからディスコ・パンクへ?〉などとヘヴィー・リスナーから邪推されるかもしれない。しかし、そんなヤツらは放っておいて、ビートに抱かれてみてごらん。そんな狭い了見から、このダイナミズムが生まれたわけではないことがきっとわかるはずだから。

「ダンス・ミュージックって、やってる側からすると遊びに近くて、とにかく楽しい。それが原点ですね。同じ8ビートでも踊らせるには力量が問われると思うんですけど、俺は踊らせたいんです。特に俺たちみたいなバンドだとトーキング・ヘッズみたいなニュアンスというか、インテリジェンスが求められがちで(笑)、踊りにくいと思うんです。でも、そんなのどうでもいいんすよ! 仮に踊ってなくても、心の中で踊ってくれてればね」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年07月29日 12:00

更新: 2004年07月29日 18:40

ソース: 『bounce』 256号(2004/7/25)

文/小野田 雄