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インタビュー

YOUNG BUCK 〈Gユニット・サウス〉の旗印を掲げるナッシュ……キャッシュヴィルのならず者、オレがヤング・バックさ!!


「このアルバムの名前『Straight Outta Cashville』はNWAから頂戴したんだぜ。ここでは今日までのオレの生き様を見せている。オレは世界にオレを感じてほしいし、オレがどうしようとしているのかも感じて欲しいんだ」。

 気分良く語るヤング・バックは、そういえば昨年末に行ったGユニットのインタヴューでも「ドクター・ドレーに憧れている」と話していたし、NWAの『Straight Outta Compton』はひとつの目標だったのだろう。彼は、Gユニットのメンバーで唯一〈外様〉にあたる、テネシー州ナッシュヴィル生まれのラッパーだ。今年でまだ23歳になったばかりの彼だが、すでにそのキャリアは10年にも及ぶ。10代初めからラップを始めていた彼は日銭を稼ぐためにハスラー生活を送り、16歳の時にニューオーリンズのキャッシュ・マネー軍団と契約。ファーム生活にしびれを切らすまで、4年間そこで過ごした。

「オレも若かったし、このチャンスは絶対だって信じてた。あそこにいなけりゃいまのオレはなかったぜ」。

 いったん地元に戻り、他人のシマで〈ビジネス〉に勤しんだ報いを受けて「出血多量で死にそうになっちまった」り、一方で幼馴染みのD・テイと作品をリリースするなどしていた彼は、やがてキャッシュ・マネーを離脱しようとしていたジュヴィナイルの新たな軍団=UTPに誘われる。

「ジュヴィは〈オレには何の保障も約束もできない。だから、ここよりお前に良い環境になる何かがあれば、それを掴め〉って言ってくれたんだ。だからジュヴィと契約した。すぐにレコーディングを始めて、最初の3日で11曲レコーディングしたぜ」。

 それが2001年のことだ。そして、UTPとGユニットの交流をきっかけに、バックはGユニットに加入することになる。基本的にフッドの昔馴染みで固められたGユニットに加わるからには、50セントが何か光るものをバックに感じたということだろう。

「50と会えるなんて、名誉そのものだったよ。オレは50のストーリーすべてをリスペクトしていたし、ユニットに入る前からファンだったからな。会うとすぐにオレたちはヴァイブを感じた。そして、ジュヴィが〈もしチャンスが来たらそれを掴め〉ってオレにいつも言ってくれてたことを実行したんだ」。

 バックの荒っぽい語り口は、50のバウンス・チューン“Blood Hound”にて注目を浴び、“P.I.M.P.(Remix)”もそれに油を注いだ。そして、ユニットとしての『Beg For Mercy』を経て、ついに登場するのがソロ・アルバム『Straight Outta Cashville』だ。たとえば、ミックステープで名を馳せてきたロイド・バンクスが二重三重に意味を張り巡らせた高度なライムでツウをも唸らせる存在だとしたら、このバックを特徴付けるものは、やはり南部出身者ならではのマイク捌きにあるといえよう。冒頭の“I'm A Soldier”のように50セントがフックを歌った曲は200%のGユニット・ムードを持つ安心曲だが、バックならではの展開はそれ以降に待ち構えている。プロデューサーのリル・ジョンをはじめ、リル・フリップ、デヴィッド・バナー、リュダクリス、T.I.、仲間のD・テイらが集結。まるでサウスのVIPによる一大パーティーのようだ。

「オレはサウスで形成された人間だから、このアルバムを〈Gユニット・サウス〉にしたかったのさ。ここには〈ストリート〉が詰まってる。軟弱なメインストリームなんてここじゃ聴けないぜ。そんなものはオレの人生にはなかったしな。『Straight Outta Cashville』にはただブッ飛ぶモンしか入ってないんだ」。

▼『Straight Outta Cashville』に参加したアーティストの作品。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年08月05日 16:00

更新: 2004年08月26日 15:59

ソース: 『bounce』 256号(2004/7/25)

文/出嶌 孝次