インタビュー

湘南乃風

レゲエ・シーンを超えて大きな支持を集めたヒット・シングルを引っ提げて、問答無用の4人が待望の新作を放つ。その名も『湘南乃風 ~ラガパレード~』!!


 この1年におけるレゲエ・シーンの成長株は?といえば、彼らの名前を挙げる人がほとんどだろう。“応援歌”“晴伝説”の大ヒットで湘南から全国へアツい嵐を巻き起こした4人衆が、その追い風に乗ってセカンド・アルバム『湘南乃風 ~ラガパレード~』を完成させた。前述したシングル曲を筆頭に、4人のフォーメーションを活かした楽曲は本作で倍増。冒頭を飾るハイテンションな“Rockin' Wild”からして、4人の個性が一層明確に際立っている。

「前作(『湘南乃風 ~Real Riders~』)は、自分らのなかでもいいアルバムになったって手応えがあったんです。だけど、それを超えるためには、自分らの幅を広げないとダメだなっていうプレッシャーもあって」(若旦那)。

「やっぱり“応援歌”あたりから変わり始めたっていうのはありますね。自分らのひとつのスタイルが見えたきっかけというか……4人いるっていうだけで、4つの顔があるわけで。それが単純に4倍じゃなくて、16倍にもなっていくような。だけど、ひとつの曲だからひとりで歌っても辻褄が通らないといけない。バラバラじゃ曲として成立しないから、そこは意識してます。4人の曲に関しては、そういう意志統一に時間をかけてますね。4人が納得できる歌というか、みんなの気持ちを背負いながら自分のヴァースを歌うっていう感覚がある」(RED RICE)。

 一方で、ソロ・チューンに関してはそれぞれが個人で制作を進め、他のメンバーも内容に関してほとんどノータッチだという。RED RICEのギャル・チューン“これが一番大事!”、HAN-KUNによるポジティヴ・ナンバー“GOOD LIFE...”、SHOCK EYEが全国のサウンドシステムに贈る讃歌“挑戦状”……と、コミカルとシリアス、ハッピーとメランコリーが幾重にも折り重なって、実に起伏のある構成を見せている。なかでも、MINMIをフィーチャーした若旦那の“MY WAY”で展開されるディスは、日本のレゲエのなかでも類をみないほど攻撃的だ。

「自分の気持ちを隠さず出して。歌でケンカするのも、まぁいいんじゃねぇかなって。犯罪じゃないやり方で(笑)。ぶっちゃけレゲエ界に入ってこうやってディスり合うのは初めてだけど、やっぱり文句があったから。でもそういう私情もあるけど、一応作品だから。みんなにもあてはまるような感情があると思う」(若旦那)。

 さて、湘南乃風の魅力といえば、日々の暮らしに根差した気負いのない言葉で綴られる真直ぐなリリックもそのひとつ。〈ろくでなしBLUES〉と〈ロッカーズ〉に共通するカッコ良さや感動を、わかりやすく繋げてくれるような、そんな魅力が湘南乃風の歌にはある。だから共感できるし、ライヴの会場でも大きな声で歌えるのだ。

「自分たちの周りに転がってるリアリティーのあるメッセージを伝えて、そこに共感していっしょに歌って、ひとつになって進んで行こうっていう。身近なところにあるテーマだから、ライヴに来てた隣のヤツとも肩組んで歌えちゃうようなところはあるのかもしれない」(RED RICE)。

「俺らはあんまりジャマイカかぶれしてないから、そういうところも出てるんじゃないですかね。たとえば、レゲエのアーティストがアメリカに進出するときは、ちゃんと英語を使うとか、向こうの音楽の歴史をBIG UPして勝負してるわけで。俺らにとっても日本の音楽っていう歴史があって、そこをまったく無視するのは絶対に違うって思ってた。ジャマイカと俺らの関係とか、NYと俺らの関係とか……そこはわりと早い段階から設定してた」(若旦那)。

「俺らのバックボーンにはガキの頃から聴いてた歌謡曲だったり、演歌だったり、お祭りでかかるような〈○○音頭〉みたいなそういうリズムも入ってる。自分の人生を積み上げてきたものを通したうえで、レゲエって音楽をどう出すか? ジャマイカで作った音だけど、湘南乃風のフィルターを通して俺らの言葉を乗せると、こういう感じになるんです」(RED RICE)。

▼湘南乃風の作品を一部紹介。

▼『湘南乃風 ~ラガパレード~』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

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掲載: 2004年08月26日 18:00

ソース: 『bounce』 257号(2004/8/25)

文/宮内 健