My Crew, My Dawgs──ジャマイカのレゲエ・アーティストに見る、クルーである理由
ダンスホールへと向かってからDJスタイルが主流となったレゲエ界では、ソロ・アーティスト同士が曲を共作するスタイルは昔も今も定番のひとつ。だが、グループや今で言うクルーに当たるチームとしてアルバム・リリースのあるジャマイカン・アーティストは決して多くはない。古くはミシガン&スマイリー、クリント・イーストウッド&ジェネラル・セイント、90年代に入ってからのチャカ・ディマス&プライアーズや、今も活躍するタント・メトロ&デヴォンテ……。そうしたなかで、湘南乃風なりFire Ballなり日本で活動する彼らのインスピレーションの大きな源となったのは、90年代中盤あたりを境にジャマイカで活動していたいくつかのクルーであろう。少年期にシンガー・デビューし、変声期を経た今も子供声で人気のゴーストらを擁したモンスター・シャック・クルー、バウンティ・キラーがジャミーズで活動していた頃の取り巻きDJ/シンガーによるスケア・デム・クルー(そこには今をときめくエレファント・マンの姿も)。さらに近年では、もうすっかり人気者のT.O.K.や、リーダーのスクを中心としたトラックメイクのセンスにも注目が集まったワード21あたりが挙げられる。クルーの頭ごしにソロを見据えるよりも、なによりまずクルーありきで活動を続けるT.O.K.やワード21の音楽は単純な頭数の足し算音楽とは違う。そこに現われたハーモニーやユニゾンこそがプラスアルファであって、そこにこそ集まる理由があることを彼らは知っている。湘南乃風は彼らの音楽と必ずしも形を同じくしないが、4人が揃って志を同じくすることは間違いないし、それこそが彼らの集まる理由だろう。
▼文中に登場したアーティストの作品を一部紹介。
クリント・イーストウッド&ジェネラル・セイントの83年作『Two Bad D.J.』(Greensleeves)
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