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インタビュー

MO'SOME TONEBENDER

ロックの持つ衝撃を損なうことなく新たな扉を開いた彼ら。新作が誘うアドヴェンチャーって!?


「今までのMO'SOMEはドギャッ、ボギボギボギって感じだったのに、シングルの“アンハッピー・ニューエイジ”なんかはスカスカで、歌もリズム楽器みたいだし、聴いてて楽しい感じになる」(武井靖典、ベース)。

 えっ、聴いてて楽しい感じ? あのMO'SOME TONEBENDERのアルバムで!? そうなのだ。打ち込みやエディットを用いた前作『TRIGGER HAPPY』でその音楽性の一端を担うポスト・パンク的な側面を今日的に鳴らしてみせた彼らが、ニュー・アルバムでは実に楽しそうですらあるのだ。とはいっても、その楽しさとは、先の見えないスリルや緊張感を前に胸を躍らせているような感じ。さすがにスリル・ジャンキーな彼らだけのことはある。しかも、アルバム・タイトルが『The Stories of Adventure』とくれば、彼らの企みはおわかりいただけるだろう。

「MO'SOMEと言えば〈爆音で、ドラム/ギター/ベースのささくれだった空気感が~〉っていうイメージが強かったんで(苦笑)、『TRIGGER HAPPY』ではそれと真逆のことをやってみようって感じだった。あのアルバムとツアーを経たことで3ピースの音作りから変わってきた部分は大いにあって。ギターの歪みや音圧でもっていく曲はやっぱり減ってきたし、曲を盛り上げるのがギターである必要はなくて、それがピアノだったり、他の楽器だったり、ベースやドラムがリードになってる曲が増えましたよね」(百々和宏、ヴォーカル/ギター)。

 ロックンロールの衝動性を、いかに損なわずして、音に翻訳するか。かつての彼らはライヴ的な録音にその解を求めていたが、本作にあっては身体中の血が沸騰する“NO WAY CITY”に象徴されるエクストリームなロック・チューンはもちろんのこと、淡い色彩のオルガンとループ的なリズム隊が牽引する“Emperor Sun & Sister Moon”や脱力ダンス・ロック“片っぽメモリーズ”、アシッド・フォーキーな“レノンレノン”と、そのアウトプットは多種多様。フィードバック・ノイズの向こうに、こんなに開けた世界が広がっているとは! しかし、その思いは本作を作り上げた彼らにしても同じこと。

「今にして思えば、聴き手としてはいろんな音楽を楽しめるのに、いざやるとなると3ピースでやるしかないのかと思ってしまって、逆にスタイルとかフォーマットに左右されてしまいがちなところがあったな、と。でも、結局、やってる側としても自分たちがどんなバンドかわからないっていう、そういう状態のほうがおもしろいのかな、と」(藤田勇、ドラムス)。

「『TRIGGER HAPPY』を作ったことで、これだけ外れたものをやっても、MO'SOMEになるんやっていう気持ちがデカくて。だから、よりボーダレスっていうか、ジャンルレスっていうか、広げる部分はどんどん広げていこうって気にはなりますよね。だって、どんなに広げても曲からMO'SOME臭が香ってくるから(笑)」(百々)。

▼MO'SOME TONEBENDERの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年10月07日 12:00

更新: 2004年10月07日 18:18

ソース: 『bounce』 258号(2004/9/25)

文/小野田 雄