インタビュー

Port of Notes

極上のアコースティック・サウンドと一級の歌声によるハーモニーがストレートに響く新作『Evening Glow』が完成! 充実したソロ活動を経て、あのふたりがついにカムバック! 


 ここ数年、〈日本のジョニ・ミッチェル〉というキーワードと共に、ヴォーカリストとしての魅力をさまざまな場所で披露してきた畠山美由紀。かたやchari chariとのユニット、AURORAでの活動やソロ作にてディープ&チルな音を追求してきたギタリスト、DSKこと小島大介。そんな2人のホームグラウンドとでも言うべきユニット、Port of Notesが3年ぶりの新作『Evening Glow』をリリースする。共に「ソロでリリースすることになった時も、別にPort of Notesを中断しようと思っていたわけではなかった」とは言うものの、この3年間は2人にとって意味のある期間となったようだ。

「バンドを事実上休止していたことによって、音楽に対するお互いの考え方が離れていたとは思うんです。でも、作っていくうえでもう一度お互いを理解し直して、また方向が一致したというか。美由紀ちゃんがソロになったことのいちばん大きな影響は、第三者の目を常に意識することが、〈ポップス〉にとっては大事なんだなっていうことに気付かされた点ですね」(DSK)。

「自分をさらけ出してコミュニケーションを取らないと、密な音楽は生まれないってことを今回のレコーディングで実感しました。作業中、大ちゃん(DSK)と何回もケンカしたし(笑)」(畠山美由紀)。

 バンドの根本姿勢を改めて確認しあった彼らが向かった〈密な音楽〉は、表現の根本を剥き出しにしたかのような、ギミック抜きの〈歌とギター〉の世界。こうして出来上がったアルバム『Evening Glow』は、構成要素の少ないミニマルな音作りでありながら、リスナーの想像力を絶え間なく刺激してくる。それは、柔らかく深い畠山のヴォーカルと空間的な広がりを持つトラックが生む、しなやかな調和によるものだ。

「〈美由紀ちゃんの歌とトラックとの対比〉に責任を持つために、基本的に上モノは全部自分でコントロールしたかった。今は技術が発達して誰でも音楽が作れる時代だから、ディテールに酔ってる人が多いじゃないですか。〈こんな変わったことをやっているんだぞ〉という感じの。僕らはそういう自我の塊は抜いて、ダイレクトに音像や感情が伝わるような、もっとポップスとしてストレートに世の中に届くものが作りたいんです。そうしないと長く聴かれるものにはならないと思っていたし。ソロを経たことで自分の出すべき音が〈これだな〉という確認ができたことが大きかった」(DSK)。

「音を整理できたのが良かったんだと思います。(DSKが)デモテープの段階でかなり細かいものを作ってくれたので、プレイヤーにはそれをなぞる作業をしてもらった。やっぱりクルーエルから出すっていうことはメジャーとは探求できることの方向が違うから、自己満足じゃないところで思う存分やれた感じはしました」(畠山)。

 そんな彼らの音楽をより豊穣なものとするべく集まったゲストは、内田直之(Dry & Heavy)、松永孝義、坂田学(Polaris)、堀川“Bobo”裕之(54-71)、栗原務(LITTLE CREATURES)。さらに大きなトピックとして、松任谷由実のコーラス参加が挙げられる。

「ユーミンの参加は、(クルーエル・オーナーの)瀧見さんが勝手に頼んだんですよ。私も初めて聞いたときはびっくりして(笑)。ずっとファンだったし尊敬もしているからもちろん嬉しいけど、普通そんなこと頼めないじゃないですか(笑)」(畠山)。

 最後に、同日のインタヴューでもっとも印象的だったDSKの発言で本稿を締めたいと思う。

「今は音に対して否定的な感じでありたくないっていうか。見たものや出した音すべてを受け止めて、肯定的に捉えていきたいんです。(アルバムを)作ったのが真夏だったので、感覚が研ぎ澄まされていたことが原因なのかもしれないんですけど」(DSK)。

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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年10月28日 15:00

更新: 2004年11月04日 18:28

ソース: 『bounce』 259号(2004/10/25)

文/ヤング係長