インタビュー

Chingy(2)

謙虚さは忘れないようにしてる

――あなたを成功に導いたリュダクリスとはどうやって出会ったの?

「前作でほとんどの曲を手掛けていたトラック・スターズの2人が彼のマネージャー(シャカ・ズールー)と仕事で繋がってて、俺たちが作ってたデモを渡したんだ。そしたら気に入ってくれてデビューに至ったんだけど……。ひとつ知っておいてもらいたいのが、俺はもうディスタービング・ザ・ピースに属していないってこと。スロット・ア・ロットという自分の会社とレーベルを始めたからね」

――そのスロット・ア・ロットの記念すべき第1弾作品となるわけだけど、今回のアルバムはどんな内容なんですか?

「〈Ballin'〉とはスラングで〈金を儲ける〉って意味なんだけど、新作では俺の好きなこと……つまり〈Powerballin'〉について語ってるんだ。成功して羽振りよく金をばらまいて、ダイヤを見せびらかしたり、大型トラックを乗り回したり、デカい高級マンションを手に入れて毎日をとことん楽しく生きるってことをね。音楽的な面でいうと、前作のほとんどはトラック・スターズが作ってたけど、今回はデヴィッド・バナーや同郷の新人たち、それに俺自身も含めていろんなプロデューサーが参加してる。だからビートやリリックは前とまったく違うものに仕上がってたりして、予想外の展開が楽しめると思うよ。ネイト・ドッグやR・ケリー、ジャネット、それに俺のクルーであるギット・イット・ボーイズ(G.I.B.)との共演もチェックしてほしいね。前作も最高だったけど、個人的には今回のほうが気に入ってるよ」

――ビートの重厚さも倍増しましたが、新作で見せた新たなチンギー・スタイルって?

「今回はいろいろなトピックについてラップした。金や自慢もそうだけど、女の子のこととかね。基本的に俺がデビューしてから経験したことをラップしてる。それは俺の新たな面だと言えるだろう。そこの部分をみんなに知ってもらいたいよ」

――あなたの名前も、会社の名前も作品もお金にちなんだものですね。曲のなかでも成功してリッチに振る舞うリリックが多いですが、なぜそこにこだわるんですか?

「なぜかって? それは、もっとリッチになって大成功したいって思ってるからさ。だから金を稼いで、リッチな生活をすることをラップしてる。会社を運営するために金を稼がなきゃいけないし、いつの日にか大きいもんを手にして俺の下の世代のヤツらや家族を食わせていかねえといけねえしな」

――今作でさらに〈Ballin'〉すると思うけど、デビュー前はどんな暮らしだったの?

「生活するのがやっとで決して豊かな暮らしではなかったね。近所は治安が悪くてギャングのケンカやドラッグは日常茶飯事だったし。けど、俺は毎日スタジオに向かってはラップを追及してきた。15年間、夢にかけてきたんだよ。それでいまの俺があるんだ。デビューして変わったことはたくさんあるけど、謙虚さは忘れないようにしてる。みんなへの愛と感謝の気持ちもね」

 どうだろう。彼をリュダクリスのサポートもあって名声と富をゲットした若造と見ていた人も多いだろうが、実は自分の会社を立ち上げ、仲間や地元のこともしっかり考えていた〈デキる奴〉だったということがおわかりいただけただろう。彼がジャケで着ているTシャツに〈I TRUST ME〉と書いてあるのは、リュダクリスへのワケありメッセージかもしれないし、自分を信じて成功を勝ち取った彼からわれわれへと向けられたメッセージなのかもしれない。とにかくさらなる飛躍が期待(確約!?)されているチンギー。その実力が試されるセカンド・ステージはまもなく開幕する!

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掲載: 2004年11月04日 12:00

更新: 2004年11月11日 18:11

ソース: 『bounce』 259号(2004/10/25)

文/佐藤 チアキ