インタビュー

Isis

ハードコアを軸にしながらもあらゆる音楽要素を吸収し続けるヘヴィー・エクスペリメンタル・バンド、アイシスが、新作『Panopticon』をリリース!!


©YUKI KUROYANAGI

 ハードコアをルーツにしながらも従来のスタイルに囚われず、さらに攻め続けるように進化しているニューロシスやディリンジャー・エスケイプ・プラン、そしてコンヴァージらが揃ってニュー・アルバムを発表した今年。そしてそれぞれの作品が、もはや〈ハードコア〉なんて安易な表現では済まされないほどの深いサウンド・アプローチを展開していることに心から感服してしまう。このアイシスも然り。ハードコアを精神的支柱に置きながら、彼らもどんどんヤバくなってる。

「もともとハードコア・バンドの出身だから、もちろんハードコアは僕の一部分だし、これからもずっとそうだ。だけど音楽全体で語るならば、とても小さいものなんだ。だからアイシスも一つのカテゴリーだけに囚われないようにしてる。僕たちのファンにもそうなってほしくはないんだ。世の中にはエキサイティングな音楽がたくさんあるからね」(アーロン・ターナー、ギター/ヴォーカル:以下同)。

 フロントマンである彼がこう語るように、アイシスのサウンドにはさまざまなエキスが渦巻いている。キーワードを挙げるなら、ポスト・ロック、インダストリアル、ゴシック、プログレ、サイケ。さらにバンド名で挙げるとするなら、ピンク・フロイド、ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!、スワンズ、レディオヘッド、メルヴィンズ、モグワイなどなど。先ごろ届けられた3作目となるニュー・アルバム『Panopticon』(哲学者/作家であるミシェル・フーコーが提唱する〈パノプティシズム〉から引用された)では、ループしながら昇り続けるビートと轟音の中に、どこかしら美しくロマンティックなメロディーが感じられるへヴィー・エクスペリメンタル・ロック作品に仕上がっている。

「いままでよりもピースフルなアルバムだといえる。でも、歌詞は相変わらず重たいんだけどね。僕たちは真逆のコントラストを描くのが好きでね、アグレッシヴさと美しさのミックスにこだわりを持っているんだ」。

 今作のプロデューサーは、ファースト・アルバム『Celestial』から関わっているお馴染みのマット・ヘイルズ。さらに目を惹くのは、トゥールのジャスティン・チャンセラーがベースでゲスト参加していること。彼らが敬愛するメルヴィンズのメンバーが、彼と引き合わせてくれたそうだ。そんな環境の中で『Panopticon』はどのようにして生まれたのだろうか?

「即興から生まれた最初のアイデアやリフで、曲のテーマを発展させていったんだ。いつもそうなんだけど、今作にはさらにコラボレーション的なところがあると思う。メンバー全員が、アイデアを出し合ってすべての曲を作ったんだからね」。

 そしてこのアーロン・ターナーは、アイシスの活動以外にも自身のレーベルであるハイドラ・ヘッドの運営をはじめ、コンヴァージやケイヴ・インのメンバーと結成したオールド・マン・グルーム、ソロ・ユニットであるハウス・オブ・ロウ・カルチャー、さらには、前作『Oceanic』と今作の本国リリース・レーベルであるイペキャクや、ニューロシスのニューロットなどとも絡みながら、もの凄い勢いで爆進し続けているのだ。このパワー、凄すぎる。

「音楽に情熱があるからね、そのために生きているんだ。人生は一度しかないのにTVを観て時間を潰したり、物質的なことに浪費してしまう人があまりにも多いと思う。そして大変なことや忍耐の要ることを避けようとする。もちろん、〈僕が誰よりも優れている〉なんて言うつもりはまったくないよ。でも僕は、これまで恵まれた環境で過ごしてきたと思うし、いくらかの才能もあると思ってる。だからこそ頑張らなきゃいけないと思うんだ。もしかしたら、いまやっていることが1年後にはできなくなっているかもしれない。だったら、いまやりたいことは全部いまやるべきだと思ってるんだ。後のことは後で考えるよ」。

 最高の音楽バカだ。心から尊敬する。

▼アイシスのアルバムを紹介。


2001年作『Celestial』(Hydra Head)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年11月04日 10:00

更新: 2004年11月04日 18:25

ソース: 『bounce』 259号(2004/10/25)

文/小林 英樹