インタビュー

50 Cent(2)

自分の記録に挑戦してる気分だ

 1度目のメジャー・デビューからドロップしてから数年後、満を辞して登場した彼のファースト・アルバム『Get Rich Or Die Tryin'』は世界中で1,100万枚を超えるセールスを叩き出したわけだが、あれだけの大ヒットに続いての新作ということでプレッシャーはなかったのだろうか?

「前作は皆に楽しんでもらえたと思うよ。大成功だよな。だから、それなりにプレッシャーはあったよ。自分自身の記録に挑戦してるような気分でね。レコーディングを始めた時は特にディレクションみたいなものは決めていなかったけど、自分のファン層にリーチしきれるだけの幅広い作品を作りたいと思ったんだ。昔と違って、いまはいろんな連中がオレの音楽を聴いてるから。でも、その点は上手くやったと思うよ。何曲か録音してから、他の曲よりも際立って優れているものを選んでいくようにしていった。そうやって選りすぐられた曲がアルバムを満たすのに十分な数になるまでレコーディングを続けたんだ。最後のほうではかなり難しい作業になったね。曲を書きすぎちまったよ(笑)。サンプル・クリアランスの問題もあったし、かなり迷ったね。だけど最終的にここで選んだ曲は前作よりもずっと良いと思うよ。サウンド的にはもっと詳細にこだわった感じかな」。

 噂では60曲以上レコーディングしたというが、往年のディスコ・ヒットから曲名を拝借した“Disco Inferno”にしても、Gユニットの新メンバーであるオリヴィアのキュートなヴォーカルをフィーチャーした“Candy Shop”にしても、決して大きく予想から外れるような曲ではない。「前のアルバムより1枚でもセールスが下回ったらがっかりするよ」と話すものの、奇抜な飛び道具ではなく、しっかりと自身の本質を弁えた楽曲作りを心掛けてきたのだろう。誤解のないように言っておくが、決して期待は裏切らないどころか十分すぎるほど当方の期待に応えてくれるアルバムだということは断言しておきたい。

「ファンの期待にはいつも応えていると思うよ。自分にも高いハードルを課すタイプだし、オレがオレに対する最大の批評家だと思ってるし。人がオレに過激なものを求めてきたとしても、自分が気持ち的にそうじゃなきゃ作れるものじゃないし。前のオレがアグレッシヴだったのは、リリックを書いている時にそういう気分だったからだけど、それだけじゃアーティストとしての多様性を見せることはできない。もっと違った側面を見せることも大事だと思うぜ」。

 とはいえ、ファット・ジョー、ジェイダキス、ナズ、ケリスらをディスしている“Piggy Bank”はやはりファンのアグレッシヴな欲求に応えることだろう。

「オレが敵視するのは、オレがハッピーだと思えるようなことについて異議を唱えるようなヤツらだよ。自分がハッピーじゃないからと言って文句を言うようなヤツとは仲間になれない。言葉や態度がオレに対するリスペクトに欠けているとか。そういうヤツを見たらオレは放っておかないよ。それが“Piggy Bank”の意図でもあるんだ」。

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掲載: 2005年03月10日 11:00

更新: 2005年03月17日 19:04

ソース: 『bounce』 262号(2005/2/25)

文/出嶌 孝次