TAICHI MASTER
各方面から集まってきた気の合う仲間たちと共に、クラブをこよなく愛する辣腕プロデューサーがデビュー・アルバム『DISCO*NNECTION』を完成!
いつだって歴史は夜に作られる。そんな言葉をよく耳にするけれど、これってなにも歴史や政治に限ったことじゃない。TAICHI MASTERのデビュー・アルバム『DISCO*NNECTION』を聴いていると、夜に生きる音楽=クラブ・ミュージックというものはなんて自由で楽しくて、カッコ良くて、かつ、かけがえのないものなんだろう!という気持ちが沸き上がってくる。そう、初めてクラブに足を踏み入れた時のあの感覚にも似た、なんとも言えない昂揚感がふたたび甦ってくるのだ。
「僕自身、ほんとにずっとクラブで遊んでばかりいて。友達だったり音楽だったり、たくさんのデカイものをクラブからもらっていたんで、その楽しさを表現して、音楽で恩返ししないといけないなと思ったんです」。
中学2年の時にビースティ・ボーイズやパブリック・エナミーに衝撃を受け、ヒップホップ・ユニット、RADICAL FREAKSを結成(メンバーはKICK THE CAN CREWのMCUとDJ TATSUTA)、80年代後半~90年代初頭におけるヒップホップ~ロック~ダンス・ミューシックの融合化による、カオティックなクラブ・シーンにドップリとハマり、次第に自身での音楽活動をスタートさせたTAICHI MASTER。テクノ雑誌「ele-king」にライターとして関わるという意外な経歴も経て、自身のレーベルを設立し、プロデューサー/A&RとしてKICK THE CAN CREWらを輩出するなどその手腕を発揮する。そして現在はアルファやJUNのサウンド・プロデュース、DJとしての活動を進める一方で、このたびTAICHI MASTERとしてアルバム・デビューを飾った。
「今まではプロデュースの仕事が忙しくて、なかなか自分の音楽まで手が回らなかったんですけど、ある時アルファの担当ディレクターからアルバムの話をいただいて、いろいろ話し合っているうちにゲスト・アーティストを入れたいという方向になって。で、せっかくだからクラブで遊んできたなかで知り合った素晴らしい仲間たちといっしょにやろう!と思ったところから、アルバム制作が動き出したんです」。
そう、『DISCO*NNECTION』のタイトルはダテじゃない。RYOJI(ケツメイシ)&宇多丸(Rhymester)の80'sライクな歌謡ディスコ、アシッド・テクノをクールに歌い上げるG.RINA、DJ TASAKA&TWINKLE(洛陽船)の暗黒エレクトロ、LITTLE(KICK THE CAN CREW)&ハナレグミによる超センチメンタルな極上歌モノなどなど……。もうヒップホップだろうがテクノだろうがハウスだろうが、そんな括りなんて関係なしで〈イイものはイイんだよ!〉という彼のアティテュードが込められた、グッド・サウンドの数々がキラメキまくっているのだ!
「僕がよく遊んでいた頃のクラブって一晩にいろんな音楽が流れてて、その雰囲気がすごく好きでおもしろかったんですよ。だからあの頃みたいに、〈カッコイイものなら何でもアリ〉だった雰囲気をアルバムでは出したいなと思って。それと、今のシーンは音楽が細分化されすぎているような気がするんで、その状況をこのアルバムで掻き混ぜてしまいたい!という気持ちもありますね。今回たくさんのゲストに参加してもらってますが、どの曲もそのアーティストにとっては意外なタイプの曲をいっしょに作っているんです。オオヤ(ユウスケ、Polaris)くんのハウスなんて、今の彼の音楽から見ると意外に思う人もいるだろうし、宇多丸さんにしてもあそこまでアイドルネタをフィーチャーしたラップは今までなかったはず(笑)。そういった今まで見えなかった側面を見せて、この人のこんな音もいいなあって、聴いた人が感じてくれると嬉しいですね」。
まさにクラブが産み落とした最高のチルドレンのひとり!と断言したいほど、根っからのクラブ・ピープルであるTAICHI MASTER。一体、彼にとってクラブとはどんな存在なのだろう?
「ちょっと大袈裟だけど、もう人生そのものって感じなんです。人生の半分以上クラブにいるんじゃないか?ってくらい、ほんとクラブで育ちましたから、なくてはならない存在です。今は法律とか厳しくて、クラブに行ける人が限られてますよね。だからこのアルバムで疑似クラブ体験というか、クラブに入れない子たちにも、クラブ(・ミュージック)ってこんなに楽しいものなんだよってことをわかってほしいですね」。
▼『DISCO*NNECTION』に参加したアーティストの作品を一部紹介
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2005年03月31日 13:00
更新: 2005年03月31日 17:37
ソース: 『bounce』 263号(2005/3/25)
文/aokinoko