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インタビュー

BROOKE VALENTINE


 アッシャーやシアラを例に挙げるまでもなく、現在のR&Bシーンを語るうえで外せないキーワード=〈cRunk & B〉。リル・ジョンが編み出したそのトレンドを強気な眼差しと共に纏って“Girlfight”でデビューしたのが、このテキサス州ヒューストン出身の19歳、ブルック・ヴァレンタインだ。

「リル・ジョンとはA&Rを通じて出会ったの。“Girlfight”はマイアミでいっしょにパーティーしたり、彼の家でチルしたりして生まれてきた曲ね。彼はとってもプロフェッショナルで、仕事をちゃんと終わらせてから遊ぶ人なの。いつもクランクしてるわけじゃないのよ」。

 アウトキャストのビッグ・ボーイもラップで参加したこの曲で、対立する女性グループに〈やっちゃうわよ!!〉と歌う彼女。デビュー以前はBKSという3人組のガールズ・グループで活動していたのだそう。

「ポップ・テイストのあるR&Bをやっていて、メンバーのひとりがラップするの。すごくエナジーがあって、大人びてて、言いたいことは何でも言っちゃうようなグループだったわ」。

 しかし、そのBKSは上手くいかず、3人は別々のキャリアを歩むことに。ブルックはグループの育ての親でもあったサブリミナル・エンターテイメントのCEO、デジャといっしょにソロ活動を始めている。そして今回のファースト・アルバム『Chain Letter』で念願のソロ・デビューを飾ったわけだが、全曲で彼女みずからが作詞を手掛けているという点にも注目したい。

「自分が言いたいことを言わせてもらってるわ。リリックのインスピレーションは普段の生活から得てるわね。生きていてブチ当たる障害とか、自分の心をよぎったこととか。毎日が新しい日で、新しい挑戦が待ち受けてるの。もちろん全部がリアリティーをベースにしたものよ。アルバムを聴いた人は、音楽を超えて私のことをわかってくれると思う。私にはそれがいちばん大事なの」。

 先の“Girlfight”も実体験を元にしているそう(彼女いわく「好きでやったんじゃないんだけど」)だが、ひとりの女性が日々経験したり考えたりするさまざまな事柄が詰め込まれた今作は、非常にヴァラエティーに富んだ内容となった。それは歌詞だけでなくサウンド面においても同じで、彼女が〈ミュージカル・ソウルメイト〉と呼ぶデジャをはじめ、ソウルディガズやビンク、ブラッドシャイ&アヴァントといったプロデューサー陣が、パーティー・チューンからロック風味のもの、サザン・ソウル的なスロウまでを提供。彼女のヴォーカルも、時に艶やかに、時にストレートに、と多彩な表情を見せている。そんなスタイルは、アラニス・モリセットからシャーデーまでという、ジャンルにこだわらない彼女の自由な音楽嗜好から生まれたものなのかもしれない。それは、おのずと誰のマネでもない〈ブルック・ヴァレンタイン〉の個性となって各曲の隅々にまで染み込んでいる。アルバム全体を聴けば、同じ〈cRunk & B〉仕様でデビューしたシアラと比べる必要もないことがわかるだろう。
「シアラには彼女の場所があるし、私には私の場所がある。私はブルックでシアラにはなれないのよ。だからこうやって、インタヴューをしたり、パフォーマンスをしたりして、みんなに私がどんなアーティストかわかってもらおうと思ってるの。そして、シアラとは違うってこともね」。
〈私は私〉……そんな言葉にも確固とした信念が表れている。では、この美しい新星がめざすところは? 

「自分自身に正直であり続けて、変わらないこと。そして、ミュージカル・ソウルメイトをはじめとした同じチームでずっとやっていくこと。セールスとか知名度に関わらず、しっかりと自分自身であり続けるアーティストになりたいわ。自分に正直で、健康で過ごせさえすれば、私はハッピーなのよ」。

PROFILE

ブルック・ヴァレンタイン
ヒューストン出身の19歳。幼い頃から教会でゴスペルに親しみ、通っていた学校でもその才能を認められる存在だった。14歳の時に地元で活動するプロデューサーのデジャと出会い、彼が手掛けるBKSというグループに参加、全米各地のタレントショウなどでパフォーマンスを披露する。グループの解散後はソロ・シンガーとしてトレーニングに励み、2002年にLAに移住。契約のチャンスを窺いながら活動を続け、同年にヴァージンと契約。2004年にゲリラ・ブラックと共演し、2005年初頭にリル・ジョンのプロデュースによるシングル“Girlfight”でデビュー。3月にファースト・アルバム『Chain Letter』(Virgin/東芝EMI)がリリースされ、4月20日にはその日本盤がリリースされる予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年04月21日 12:00

更新: 2005年04月21日 17:02

ソース: 『bounce』 263号(2005/3/25)

文/佐藤 ともえ