インタビュー

Rooster


 ファースト・アルバム『Rooster』が今年の1月にUKでリリースされた際には、全英で初登場第3位。彼の地ではちょうどロック全般に追い風が吹いているとはいえ、まだ平均年齢21歳のこの4人組をラッキー・ボーイズだと思う人も多そうだ。ハンサムだし。とはいえ、実は〈音楽を志して苦節ウン年〉の苦労人集団だったりするから、知れば知るほどルースターはおもしろい。

 現在24歳になるヴォーカルのニック・アトキンソンは、学生時代からの友人だったルーク・ポタシュニックらとルースターを組む前からバンド活動に励んでいる。だが、60~70'sラヴ!なフリンジ付きの洋服でステージに立っていた当時の彼を、周囲が〈ちょっと変わったヤツ〉と思っていたのは想像に難くない。それほど彼は、70's命。

「デビュー・アルバムの大半は、バンドが結成される前に書いていたんだ。俺はロンドンで3年間音楽活動をして、曲を書いたりレコーディングをしたりしていたから、たくさんの曲を抱えてた。ルークもたくさん曲を持っていたから、アルバムに収録されている曲の大半は俺とルークがいっしょにプレイしながら手直ししたものが中心なんだ」(ニック・アトキンソン:以下同)。

 実際彼らのサウンドは、印象的なギター・リフを展開していきながらグルーヴを生み出していく、まさに70'sタイプ。

「80'sの音は、ちょっとやりすぎ」と語る男気溢れるバンドらしく、若いとは思えないほどに4人揃って腕前はイブシ銀。ライヴではクリームのカヴァーを披露するほどだ。それでいて、若さ溢れるステージ・アクションは得も言われぬ高揚感を生み、早くもUKでは〈ベスト・ライヴ・バンド〉との呼び声が高い。〈興奮させる〉術をよく知っているニックのフロントマンっぷりは、ワイルドなセクシーさも含め、あれだ、ミック・ジャガーのタイプ。ロックスターのオーラがある。

「そう、俺が初めて行ったコンサートはローリング・ストーンズ。10歳のときだった。だから、ロバート・プラントと並んでミック・ジャガーが俺にとって最高のロックンロール・フロントマンなんだ。ロバート・プラントといえば実はこの4月にロイヤル・アルバート・ホールで彼の前座を務めることになっていてね。きっと素晴らしいことになると思う。この2人が俺にとって究極のロック・フロントマンだね」。

 ロバート・プラントの名前も挙げるあたりがシブいシブすぎるしイイ! それでいて現地のライヴに行けば、女の子たちもこのイケメン集団にシビれている姿をしばしば目撃。まさに老若男女を巻き込んでいるからこそ、全英3位をストレートに獲得できたのだろう。

「いまのバンドのなかには、音楽に対して凄くシリアスで、音楽にしか興味がないような連中も大勢いるよね。観客はしっかり音楽に耳を傾けて演奏を称賛してくれよ、みたいな。でも俺らはただ、1時間ほど我を忘れて楽しんでほしいんだ。飛び跳ねて汗をかいてくれれば、それでいい。ステージに立つときにめざしているのは、それだけさ。俺ら自身も汗をかいて楽しみたいし、俺たちが夢中になれば、観客も同じように楽しんでくれる」。

 ちなみに、大学でルークは経済学を、ニックは英語と演劇を学びつつ、2人とも途中でドロップ。そして、あてもないまま音楽に突き進んでいる。リズム隊であるベン・スミスとデヴィッド・ニールもスゴ腕なのに〈鳴らさない音〉の重要性を知っており、どんな曲でもお手の物だ。ガレージ・リヴァイヴァルからニューウェイヴの流れで軽めの音が主流の最近のロック・シーン。〈そろそろ重厚で熱いロックが聴きたい〉と思っていた人よ、お待たせしました。21世紀のミック・ジャガーは、ここにいた(本物も元気だけど)。

PROFILE

ルースター
2003年にロンドンで結成。ニック・アトキンソン(ヴォーカル)とルーク・ポタシュニック(ギター)が共同で楽曲制作を開始、その後、ベン・スミス(ベース)とデヴィッド・ニール(ドラムス)が加わって現在のバンドとなる。ライヴでの評判が広がるなか、レーベルを立ち上げたばかりのヒュー・ゴールドスミスの目に留まりブライトサイドと契約、2004年10月にシングル“Come Get Some”でデビューを果たす。同曲はそのあとに続くシングル“Staring At The Sun”と共に連続トップ10ヒットをマーク。アルバムへの期待が高まるなか今年の1月には本国でファースト・アルバム『Rooster』(Brightside/BMG UK/BMGファンハウス)を発表。その日本盤が4月20日にリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年04月21日 12:00

更新: 2005年05月06日 19:40

ソース: 『bounce』 263号(2005/3/25)

文/妹沢 奈美