インタビュー

ELLEGARDEN


 メディア的に言えば〈ブレイク前夜〉なのはわかってる。わかってるのだが、それはこっちの勝手な都合だし、余計なプレッシャーをかけても良くないし、何よりも、この純粋で美しくて笑えて泣ける最上級のロックを、単なる消費財にするわけにはいかない!──とかなんとか、要らぬ心配をしていた自分が馬鹿であった。細美武士は誰よりも冷静に、まったくの素で、みずからの立ち位置を把握している、相変わらず頼もしい男である。

「状況の変化に関しては、やってきたことが実を結びかけてきたのかなと思えば、当然嬉しいんだけど、振り回されてもしょうがない。俺たちにできるのはいいアルバムを作ることだけで、それだけ集中してやっていれば、結果はどうあっても自分のものだから。そういう意味では、すごく納得のいったアルバムだと思います。妥協していない、どこも」(細美武士:以下同)。

 オリコン誌のインディー・チャート2位、総合チャートでも17位を記録した前作『Pepperoni Quattro』の最大の魅力でもあった、ズバ抜けたメロディーのキャッチーさとバンドの勢いとキレのいいビートはそのままに。たとえば“Snake Fighting”では極悪ヘヴィ・ロックなサウンドに挑み、“I Hate It”ではソフトなミディアム・テンポに無限の広がりを持たせるなど、随所に〈深み〉が増しているのが特徴である。

「そんなもの、ありました(笑)? いろいろ新しいことにチャレンジしたという意味では、『Pepperoni Quattro』のほうがやってましたけどね。今回は、よりストレートに作った記憶があります。いつもそうなんだけど、メンバーと〈こういうアルバムを作ろう〉という話もなく、いきなり音を出すんですよ。それで20~30分延々やってるうちに、形が整っていく。曲を作ってる時の会話は〈どう?〉〈いいっすね〉とか、〈できた?〉〈できたね〉ぐらい(笑)。元ネタが300ぐらいあったものを、削って削って残ったのがこの10曲です」。

 乾いたサウンドの質感と、あっけらかんと突き抜けるポップなメロディーは、今までならばメロコアと称されただろうが、もはやジャンルは無用。ELLEGARDENはELLEGARDENでいいじゃないか?

「俺たちが作ったアルバムを、ロックだと言われたら形が変わるわけでもないし、パンクだと言われたら違う響き方をするわけでもないし、スピーカーから同じ音が出るだけだから。良い音楽とか悪い音楽っていうのはなくて、好きか嫌いかだけじゃない? 好きになってくれる人は、ぜひライヴに来てくれるといいよね」。

『RIOT ON THE GRILL』=鉄板の上の暴動、というナンセンスなタイトル感覚も、ELLEGARDENらしい。笑い飛ばそうぜ、楽しく生きようぜ、と言い続けることがどれほどタフなことか、彼らはわかってる。売れた枚数がどうのこうのよりも、この〈感覚〉がより多くの人に伝われば、世の中のくだらないもめごとも減ると思うのにな、とか、ロマンティックなことをふと思ってしまうほど、このアルバムに込められた思いは想像以上に広く、深い。

「このジャケットで『RIOT ON THE GRILL』っていうタイトルだと、真剣に生きてるのが馬鹿らしくならない(笑)? ニヤッとする感じとかさ、そういうことができるのが、音楽のいいところだと思いますよ。そりゃあもちろん、世の中のいろんな出来事を知らないわけじゃないけど、俺たちがやりたいのは、楽しくバンドをやりたいということだけ。それを手段として、何か目的を達成したいと思ったことはないんで。それで、もし二次的なものとして、みんなの明日の朝メシがうまくなるんだったら、それより最高なことはないですよ」。

PROFILE

ELLEGARDEN
98年結成。細美武士(ヴォーカル/ギター)、生形真一(ギター)、高田雄一(ベース)、高橋宏貴(ドラムス)から成る4人組バンド。結成の地である千葉にて初ライヴを敢行し、その後活動の場を拡げつつ、2001年には初音源『ELLEGARDEN』を発表。全国各地でライヴを行いながら、2002年にはファースト・アルバム『DON'T TRUST ANYONE BUT US』を発表。シングルを挿みながらも同年に『My Own Destruction』、2003年に『BRING YOUR BOARD!!』と、ハイペースに作品をリリース。2004年作『Pepperoni Quattro』が好セールスを続けるなか、このたび4枚目のフル・アルバム『RIOT ON THE GRILL』(GROWING UP/Dynamord)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年05月06日 12:00

更新: 2005年05月12日 19:08

ソース: 『bounce』 264号(2005/4/25)

文/宮本 英夫