インタビュー

THE REBIRTH

爽快で優美なグルーヴの結晶……噂のバンド、リバースから届けられたクロスオーヴァーな旅とは?


 マイティ・ライダーズ“Evil Vibrations”のカヴァーが評判となった7人編成のクロスオーヴァーなソウル・バンド、リバースが初のアルバム『This Journey In』をリリースした。昨年、ノーマン・ジェイのコンピ『Giant 45』や『Om Lounge 9』などでチョイスされていた彼らのデビュー・シングル“This Journey In”は、実際のところ2002年にリリースされていたものだし、LAでバンドが結成されたのはそれよりさらに4年ほど前。それぞれ長いキャリアのあるツワモノ揃いらしく、特にリーダーであるカルロス・ロスリート(キーボード)は90年代半ばにメッシュ・オブ・マインドで活躍し、その後はブレイケストラに名を連ねたこともあるヴェテランだ。

「こういうバンドをやりたいという構想はずっとあったんだ。ちょうどUKでアシッド・ジャズが動き出した頃かな。メッシュ・オブ・マインドもそのコンセプトから生まれたんだけど、まだ〈ネオ・ソウル〉なんて言葉もなかった時代のUSで、その手のバンドはなかなか受け入れられなかったね」(カルロス、以下同)。

 ちなみに自然消滅したメッシュ・オブ・マインドを元に発展したのがオゾマトリなのだそうだ。それはさておき、カルロスが15年に渡って温めてきたアイデアはリバースというバンド名からもよくわかるはず。

「アース・ウィンド&ファイア、プレジャー、ニュー・バースなど、いまではあまり見られない〈真のソウル・バンド〉への〈回帰〉という意味がある。また、何度かの挫折を経て現在のバンドが生まれたこととも関係があるよ」。

 最初はメッシュ・オブ・マインドのファンだったというラウル・ゴンザレス(パーカッション)や、上で名の挙がったニュー・バースのメンバーが父親だというクリス・テイラー(ドラムス)など他のメンバーにもそれぞれユニークな背景があるのだが、なかでも紅一点のノエルは2パックやブラック・アイド・ピーズ、DJ TONKらの作品に参加して、すでに知られた存在だったそう。

「僕とブレイケストラのマイルス(・タケット)がLAでやっている〈Root Down〉というイヴェントに出演していたバンドのゲストでたまたまノエルが歌っていたんだけど、ダイナミックな力強さと、繊細なスウィートさの両面を兼ね備えていて、とにかく素晴らしいと感じたよ。こういったヴォーカリストにはなかなか巡り会えないね」。

 そのようにベタボメ状態のノエルが幻想的でソウルフルな歌唱を自在に披露する『This Journey In』は、ファンク、ソウル、ラテン、ヒップホップ、ハウス、ジャズなど多彩なフレイヴァーが優しく溶け合った、文句の付けようがない力作になっている。

「ワン・フレーズで表現すると、〈アルバム・オリエンテッド・ソウル〉。楽曲単位じゃなくアルバム全体がひとつの作品だという……そういう点ではスティーヴィー・ワンダーの『Innervisions』といっしょさ。このアルバムを聴く人に、最初の一音から最後の一音までの旅を味わってほしいんだ」。

 ライヴにも自信を見せつつ、「ただグルーヴだけに酔いしれて、レコードの片面20分もジャムるようなバンドだと思われたくないしね」と、レコーディング作品ならではの作り込みも心懸けられた『This Journey In』。このアルバムが誘う旅は、誰にとっても豊かなものになるはずだ。

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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年06月16日 12:00

更新: 2005年06月16日 17:07

ソース: 『bounce』 265号(2005/5/25)

文/高橋 玲子